第354話
買い物が終わって店の外に出てみると陽が暮れ出してきた頃だったので近場の店で晩飯を食べ終えた俺達は、別れの時を過ごす為に大通りの十字路にやって来ていた。
「九条さん、マホさん、今日は街の案内をしてくれてありがとうございました。」
「いえいえ、ガドルさんとサラさんのお役に立てたのなら何よりですよ。」
「そうですね!あっ、他にも行きたいお店とかがあったら何時でも訪ねて下さいね!ご期待に添えられる様に頑張りますから!」
「うふふ、お2人共お優しいんですね。」
「うん、それにとっても頼りになる。」
「あらあら、ソフィちゃんったら本当に皆さんの事が大好きなんですね。」
「ははっ、昨日の夜で分かり切っていた事だけどこうして目の当たりにさせられると妬けてきてしまうね。」
「……昨日の夜?」
「えぇ、聞いて下さいますか?実はソフィちゃん、昨日の夜は寝るまでずっと皆さんとの思い出話を話してくれていたんですよ。どんな風に出会って、戦って……そして仲間になったのかをそれはもう嬉しそうに……実は、今日の夜もその続きを……」
「まま……恥ずかしい……」
「えへへ……私達もちょっと恥ずかしいですね、おじさん。」
「うん……そうだな………」
知り合いのご両親から自分達がどう思われてたのかを聞かされるのが、こんなにも羞恥心を煽られるものだなんて……!顔から火が出そうとはまさにこの事ですよっ!
「……さて、名残惜しいですがそろそろお開きにしましょうか。あんまり遅くなってしまってもいけませんからね。」
「ロイドさんがお家に帰って来た時におかえりなさいの言葉を掛けてもらわないと、寂しくて泣いてしまうかもですからね。」
「いやぁ……ロイドに限ってはそんな心配は必要無いかと思いますけどね……」
「まぁまぁ、明かりのない家に帰るのが寂しいって言うのはおじさんも知ってるじゃないですか。だってロイドさんと出会う前はずっとそんな感じだったんですから。」
「うっ、そう言われると否定は……出来ないな……しょうがない、帰るとしますか。ソフィ、ガドルさん、サラさん、それではまた。」
「ソフィさん、今日もたーくさんお2人に甘えて来て下さいね!」
「……うん、分かった。」
「うふふ、それじゃあ早く宿に戻りましょうか。九条さん、マホさん、今日は本当にどうもありがとうございました。」
「またお願いしたい事が出来た時はお伺いさせてもらいますので、その時はよろしくお願いします。それでは、私達はこれで。」
夫婦揃って頭を軽く下げた後にソフィを挟んで手を繋ぎながら立ち去ってく家族の後姿が見えなくなるまで見送った俺とマホは、互いに目を合わせてから家路を歩いて行くのだった。
「……ふぅ、明日こそは家でのんびりとしたいもんだなぁ。」
「うーん、それは難しいと思いますよ。おじさんの願い事って、こういう時に限って叶った事がありませんからね。」
「……あはは……それもそうですね……」
「まぁ、どうなるかは分かりませんが応援だけはしてあげますよ。」
「あはは……そりゃどうも……」
俺は手をギュッと繋いで微笑みかけてきたマホに苦笑いを返しながら、ゆっくりと薄暗くなっている空を見上げるのだった。
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