第285話
手持ちの金と相談しながら市場を見て回ってから数十分後、俺は買ってきた食材を使って中二病患者と昼飯対決を開始した訳なんだが………
「だからクリフ君!その包丁の持ち方は危ないって言ってるだろ!」
「や、やかましい!我はこの持ち方が丁度……いってぇ!」
「もう、だから言ったじゃないか!」
「ぐっ、どうして我がこんな事をせねばならないんだっ……!」
はっはっは!今更になってそんな後悔をしても遅いぞ小僧!!貴様が勝負の内容をこちらに任せたのがそもそもの間違いだったのだよ!……って、そんな事より異性の幼馴染と一緒に料理だなんて羨ましすぎだろ!?マジでふざけんなよこの野郎が!!
「おじさんってば嫉妬心が剥き出しになっちゃてますね……まぁ、お2人はお料理に夢中になっていて気づいて無いみたいですけど。」
「ふふっ、そんな心理状態にも関らず料理をする手つきがブレないのが流石だね。」
「……おなかすいた。」
真横でイチャコラとしているラノベの主人公みたいな奴に負けてたまるかと決意を新たにしてから数十分後、食卓の上に並んだ2つの料理を食べ比べた女性陣は静かに視線を交わした後にマホをジッと見つめて………
「この勝負………満場一致でおじさんの勝ちです!」
「いよぉっしゃ!!」
「ぐぅっ!!」
「勝敗の理由は勿論、おじさんの作ったお料理の方が美味しかったからです!」
「味付け、見た目共に満足のいく出来だったよ。」
「おいしかった。」
「クリフさんのお料理は味の濃い部分と薄い部分の差が激しく、入っていたお野菜の大きさがバラバラでした!その点が今回の敗因と言っても良いでしょう!」
「や、やはりそうか……!しかし、これはあまりにもズルいではないか!料理が素人である我を相手に昼食を作る勝負を仕掛けるなど!」
「笑止!どんな勝負でも勝つと大口を叩いたのは貴様自信だろう!それを今になって卑怯だなんだと騒ぐなどとは片腹痛いわ!」
「こ、このぉ!」
「悔しいか?ならば逃げ出さず俺と戦うがいい!」
「……おじさん、何でノリノリになっているんですか。」
「いや、ちょっと色々と懐かしくてさ……それでどうだ!?我と戦うのか?!」
「……あぁ、よかろう!それでは次の勝負内容を我に申すがいい!」
「面白い!それでは次の勝負は……『ピカピカッ!お掃除大作戦!』……だっ!」
「な、またそんなふざけた……!」
「勝負の方法は実に簡単!この家の中を綺麗に掃除するだけだ!」
「そ、掃除だと!?どうして我がその様な事をせねばならんのだ!?」
「ふんっ、また文句か?そんなに不満ならばこの場から立ち去るがいいわ!」
そしていい加減にこの面倒事から解放して下さい!ってか本当に勘弁してくれよ!こっちは日頃の疲れを癒す為にベッドでゴロゴロしたいんだからさ!マジで帰れっ!
「……面白い!そこまで言うならその勝負、受けてやろうではないか!」
「……良いのか?掃除の経験などそんなに無いだろう?無理をするな、ここは諦めて家に帰ると言えば許してやっても」
「我を舐めるでないわ!それで勝負の内容は!?」
「……俺は1階、お前は2階の掃除だ。30分後、綺麗になっていた方が勝者だ。」
「はっはっは!我にかかれば掃除など楽勝だ!さぁエルア、勝負開始の合図を!」
「あ、うん……それじゃあ……勝負、開始!」
「待っていろ!家の中の汚れどもめ!」
「……アイツ、掃除する道具も持たずに何をする気なんだ?」
「さぁ……すみませんがエルアさん、クリフさんの事はお願いしても良いですか?」
「わ、分かりました。」
2階に向かったアイツを追ってエルアがリビングから出て行った後、俺はため息を零しながら椅子に座り込むのだった。
「あー……しんどいもう………」
「へぇー、そんな事を言ってる割には楽しそうに見えましたけど?」
「だってさぁ、ああしてた方がアイツを乗せやすいだろ?どんなに負けると分かっている勝負だってな。」
「おやおや、ズルい大人だね。」
「ハッ、何とでも言ってくれ……さてと、俺もぼちぼち掃除を始めるとすっかな。」
後頭部をガシガシと掻きながら椅子から立ち上がって勝負に取り掛かった俺は……当たり前だが圧勝して、その後にやった『生命が溢れる緑の大地を更地に変えよ!』なんてて名前を付けられた草むしりに関しても無事に勝利を収める事になった。
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