第238話
「えへへ!明日から始まるお祭りってどんな感じなんですかね!ワクワクします!」
「ふふっ、興奮しすぎて明日に差し支えないようにね。」
「勿論ですよ!」
「……私はお祭りよりも斡旋所が開催しているイベントの方が気になる。」
「あぁ、確かに海底に沈んでいるダンジョンとは興味が惹かれるね。だがそこに挑むには7つのクエストをこなして抽選に当選する必要があるらしいが……まぁ、そこに関しては特に問題は無いだろうね。」
「そうですよね!だって当初からの目的にクエストをやるって入ってるんですから!おじさん、頑張ってクエストを終わらせて抽選カードに番号を集めましょうね!」
「…………あぁ、そうね。」
別荘に戻って来てから数時間が経ち、料理人の方達が用意してくれた晩飯を食べて風呂に入って自分の部屋でのんびりしようと扉をガチャッと開けた瞬間、急にマホとロイドとソフィが押しかけて来て今に至る訳なんだが……もうさっきから部屋の中に物凄く良い香りが充満していて心臓がバックバクなんですけど?!
「さてと、雑談はこの辺りにして明日の予定を決めてしまおうか。父さんと母さんが就寝する前に報告をしてこないといけないからね。」
「えっ、明日の予定?」
「はい!……あっ、そう言えばおじさんにはまだ説明してませんでしたね!実はついさっきエリオさんとカレンさんに会って明日の予定を好きな様に計画して欲しいって頼まれたんです!それで……はい!どうぞ!」
「いや、どうぞって………何なんだコレ?」
「それはカレンさんから預かった本です!クアウォートの観光名所とかが載っているらしいですよ!」
ガラステーブルの上に重なる様に置かれていた本の1冊を手渡してきたマホにそう説明された俺は、ふぅと小さく息を吐き出すと本の中身にさっと目を通してみた。
「ふーん……これには海に関する遊びとかそういう系のが載ってるみたいだな。」
「えっ、そうなんですか!ちょっと私にも見せて下さいよ!」
「う、うぉ!?ちょ、近すぎるって!おい、聞いてんのか?!」
「うわぁ!ほらほら、コレを見て下さいよおじさん!今年から海の上を滑って遊べる新感覚のレジャーが始まったそうですよ!」
「おや、それは非常に興味深いね。是非とも私にも見せてくれるかな。」
「わ、分かった!見せるからグイグイ近寄ってくんなって!ねぇ、聞いてる?!」
さっきまでソファーに座っていたはずのロイドはニヤッと笑ってから俺が座ってた椅子のひじ掛けに手を置いて本を覗き込んで来やがった!?ってか、コイツの場合は絶対に確信犯的な行動だろ?!だってもう、目がそうだって語ってるもの!
風呂上がりの美少女2人に挟まれて涙目になりそうになっていると、マイペースに本を読んでいたソフィが……真正面から急接近して来た?!
「九条さん、このモンスターに関するクエストを受けたい。採取できる素材が武器の強化に使えるらしい。」
「いや、それは明日の予定では無理……分かった!ちゃんとクエストを探して受けるからお願いだから膝に手を置いてジッと見つめてこないで下さい!」
……そんなこんなありながら明日の予定を海メインで組み立てて満足そうに部屋を去って行った皆を見送った俺は、何度も深呼吸をして心を落ち着けてから備え付けてあった紅茶を淹れながらバカでかいため息を零すのだった。
「……ぐっ……心臓に悪すぎる………!」
第三者から見たら羨ましいと思われるだろうが、女性に対する経験値が極端に低い当事者からしたらほとんど拷問ですよ?!ってか、どうしてコレに関しては10倍の効果がいつまでも発揮されないんだよ!おかしくね?こんなに色々と経験してたら、もっと女性に慣れていても良いと思うんですけどね!
「はぁ………やっぱ異世界でも、非リア非モテには現実は厳しいなぁ………」
いや、こんなリゾートホテルの並みの広くて豪華な部屋に泊まれてるって時点ではそこまで厳しくは無いんだろうが……女の子に関してはまだまだって感じだよなぁ。
「………そう言えば、占い師に関する事をあいつ等に言い忘れてたな。」
まぁ言い忘れてたってか意図的に言わなかったんだけどさ……異世界がどうのって話はそもそもマホ以外に出来ないしな。
「それにしても、マジであの幼女は何者だったんだ?」
俺が別の世界から来た事を知ってたって事は……まさか俺をこの世界に転移させた誰かの仲間って事か?でも、だとしたら俺に接触してきた理由は何なんだ?
「…………あぁクソ、考えてもよく分からん!」
とりあえず今は、あの幼女が言った占いの結果だけ注意して行動する事にしよう!確か大いなる相手に試練をどうのこうのって話だったが……うーん、それが何なのか分からないが出来る事ならそんな面倒は避けて行動したい所だな。
「俺だけだったらまだ良いが、アイツ等を巻き込むのは気が引けるからな。」
どんだけレベルが上がって強くなろうが、俺からしたらまだまだ子供だからな……危険な事にはなるべく巻き込みたくない……って言ったら、ロイドとソフィが珍しく膨れてやがったな……でもまぁ、悪いけど大人としてここは譲れんのよ。
「……さてと、明日に備えてそろそろ寝るとしますかね。」
ティーカップに淹れた紅茶をグイッと一気に飲み干した俺は洗面所で歯を磨いたりしてから明かりを消してベッドに潜り込むと、部屋の外から響いてくる波の音を聞きながら深い眠りにつくのだった………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます