第182話
マホ達からの追及にあっさりと心を折られて全てを白状した俺は、嘘をついた償いとしてそれぞれ欲しい物をどれでも1つ買うという事で何とか許しを得る事が出来た。
その結果、小切手を引き換えたおかげで分厚くなっていた財布は太陽が傾く頃には見事にやせ細ってしまっていた……いや、自業自得だからしょうがないとは思ってるけどもうちょっと手加減してくれても良かったのではありませんかね!?
「えへへ、これに懲りたらシッカリと反省して下さいね!」
「へいへい、心の底から反省させて頂きましたよ……はぁ~………ん?」
両手に色んな物が入っている紙袋を抱えた3人娘達に囲まれながら盛大にため息を吐き出して宿屋前まで戻って来ると、どういう訳だか建物の前に警備兵が並び立っていて……俺と目が合うとスタスタとこっちに歩み寄って来た?
「申し訳ありません、九条透様でいらっしゃいますでしょうか。」
「え?あ、はい……そうですけど……貴方達は?」
「セバス・チャン様からお預かりした物をお届けに参った者でございます。どうぞ、こちらをお受け取り下さいませ。」
「手紙……ですか……」
突然の申し出に困惑しながら差し出された白い封筒を手に取ると、警備兵は丁寧にお辞儀をして大通りの方に消えて行ってしまった。
「おじさん、セバス・チャンさんって確かお姫様に仕える時に色々と教えてくれた人でしたよね?」
「あぁ、俺が色々と世話になった人だ。にしても、なんでまた手紙なんか……?」
「ふむ、とりあえず封を開いて手紙を読んでみたらどうだい?」
「……そうだな。」
人通りの邪魔にならない位置に移動してから慎重に封を開いて行くと、その中には折り畳まれた手紙と薄いが頑丈な一枚のカードらしき物が入っていた。
それが何なのかパッと見ただけでは分からなかったので、俺はとりあえず手紙の方から目を通してみる事にした。
【拝啓 九条殿とそのお仲間の皆様へ
突然の事でご迷惑かと思いますが、皆様の再会を祝しましてこちらで宿屋の手配をさせて頂きました。
場所はカードキーに刻印されている名前を案内所でお尋ねになれば教えて頂けると思いますので、気が向きましたら足を運んでいただけると幸いです。
九条殿、今まで本当にご苦労様でございました。またお会い出来る日が来るのを心より楽しみにしております。
セバス・チャンより】
見覚えのある筆跡で書かれた手紙を読んでからしばらく沈黙してしまっていると、すぐ隣に立っていたマホが目をキラキラさせながら俺の顔を見上げてきた。
「おじさん!行きましょうよこの宿屋!」
「あぁ、うーん……いやでもなぁ……一応、宿屋は予約してある訳だし……」
「ふふっ、私もマホの意見に賛成するよ。折角セバス・チャンさんという方が私達の為に宿屋を手配をしてくてたんだ。それを無駄にするなんて勿体ないと思うよ。」
「まぁ、そりゃそうだけど……」
「私も賛成。久々に皆で夜を過ごしたい。」
「……分かったよ。それじゃあセバスさんが手配してくれた宿屋に行く為に、まずは案内所に行くぞ。」
「はい!分かりました!」
「はてさて、どんな所なのか楽しみなってきたね。」
「うん。」
その後、3人が予約していた宿屋に立ち寄って事情を説明してから荷物を回収してくると俺達は案内所に足を運んでセバスさんが手配してくれた宿屋がある場所の事を教えて貰った。
そうこうしているとあっという間に空は既に真っ暗になってしまっていて、俺達は地図ならお任せでお馴染みのマホに案内されて目的地の前までやって来たんだが……セバスさんが手配した宿屋は1泊で数万はするだろうってな感じの外観をしていた。
「うわぁ!こんな凄い所に泊まれるなんてとっても嬉しいです!ほらおじさん!早く受付に行きましょうよ!」
「わ、分かったっての!」
興奮した様子のマホにグッと手を引かれ宿屋の中に入って受付まで向かった俺は、ニコッと微笑みかけて来る男性にカードキーを見せてみた。
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。セバス・チャン様からお話は伺っております。すぐにお部屋の鍵をご用意致しますので少々お待ち下さい。」
「あっ、はい。」
カードキーを手に取ってそれを受付の下に仕舞った男性は、振り返って後ろにある棚から1つの鍵を取ってそれを俺達の前に置いてきた。
「お部屋に行くにはそちらにある階段をご利用下さいませ。それでは良い夜を。」
「どうも、失礼します。」
軽く会釈をしてマホとその場を離れた俺はロビーにあるソファーに座って待機していたロイドとソフィと合流すると、階段で5階まで上がって行くと鍵を使って部屋の中に入って行くのだった。
「うわぁ!すっごく広いですね!何だかワクワクしてきちゃます!」
「ふふっ、興奮する気持ちも分かるけど明日の朝も早い事を忘れずにね。」
「はーい!あっ、お風呂ってどんな感じなのか見て来て良いですか!?」
「良いですかって……ったく、答える前に行っちまってるじゃねぇか……」
「まぁまぁ、私達もくつろぐとしようじゃないか。折角のご厚意なんだからさ。」
「……それもそうだな。あんまり時間がある訳でも無いんだし、溜まっている疲れを少しでも取れる様にのんびりさせてもらうとしますかね。」
そんな事を呟きながら抱えていた荷物を床に置いた俺は、久しぶりに会った仲間と同じ時間を過ごしていくのだった。
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