第130話 「129話」
その後、特にモンスターの襲撃だー!みたいなイベントもなく俺たちは無事朝を迎えていた。
ダンジョンの中ではあるけど、それは青く澄み渡り、どこまでも晴れ間が広がっていた。……だと言うのに俺の心は酷く沈んでいる。
「人は悲しみを知り、それを乗り越えて成長するもの……」
「何を言っとんのだお前は」
いや、地味にショックだったもんで……。
自分としては半身があれなだけで、極々真っ当で真面目な人間のつもりだったんだけどね。いや、まじで。
「これから未知の領域まで向かうわけだが。 今までと違って下層の敵はさすがに無視して進むのは厳しい、だから倒しながら進むがいいか?」
朝食代わりのバナナをもしゃもしゃ食べていると、未知の領域を発見したパーティーリーダーの……な、名前なんだっけ……?
「グランニャ」
はっ、そうだった!
グランさんだね、グランさん。
しかしタマさんなんで俺が名前忘れてると分かったのだろうか……これはあれか。以心伝心ってやつじゃないだろうか!? きっとそうに違いない。
ふふふ……俺とタマさんの仲も遂にそこまできたか……!
無言で後頭部はたかれました。ありがとうございます。
ま、まあ……ここから敵もグッと強くなるし、気持ち入れ替えていかないとね。
こんだけ人数居ればちょっとやそっとじゃピンチになることは無いだろうけど。
……フ、フラグじゃないよ?
「ほっ」
前衛の間を抜けたモンスターが後衛の元へと迫る……が、高レベルがこれだけ揃っているのだ一匹抜けたところで何ができるわけでもなく、カールさんの放った矢が眉間に突き刺さり、頭部が爆発四散する。
……いや怖いわあの矢、おかしいでしょう……。
「思ったより敵いねえな」
「そっすよねえ」
ゴリさんの言葉に同意する俺。
下層だけあってさ、敵も強いし中層とかと比べると数も多いんだけどー……タマさんと何度も潜った経験からいって、下層にしてはちと少ないんだよね。
未知の領域に敵いっぱいつまってるんかねー?
「ウッド」
「ん?」
ぼけーっと考え事しているとタマさんに後ろからつつかれた。
なんでしょね?
「桃早めに作っておくニャ」
「桃……分かった、ちょっと止めはこっちに回してくれるよう話てくる」
桃ね、一応ちょいちょい作り始めてはいたけど敵の数も少ないし、まだ数は揃ってないんだよね。
未知の領域に着くまでに人数分出来ないかもだし、ちょいと他の人に事情話して最後に吸わせて貰っちゃおう。
それなら問題なく皆に行き渡るはず。
まあ、あっさり出来ましたよ!
下層の敵は強くて生命力?いっぱいだから、そんなに大量に吸わなくていいから助かる。
とりあえず皆に渡してーっと。
前に食った人は効果も知ってるし、普通に美味しそうに食ってるね。
「こ、これ何なんだ!? ……あ、いや何でもない。 ありがたく頂くな」
でもやっぱ初めてだと驚くよねー。
疑問が一杯って顔ですっごい気になるんだろうけど、あまり聞かないでくれるのがありがたい。
んまあ、たっぷり食うのですよ。
「うまー。 うまいし強くなるし、反則だよねーこれ」
「確かにまあ、そうっすよね」
まあ反則だとは思う。
桃食っただけでタマさんの魔法より効果高いし、美味しいし。
デメリットも敵から吸うようになった今となっては俺がちょっと痛いだけだしね。
「お前まさかこっちの方面に伸びるとはなあ……」
「いやー、自分でもびっくりですよ」
桃の種を名残惜しそうに見ながら、そう俺に話しかけてくるキンバリーさん。
いやね、俺もまさかそっちの方向に伸びていくとは思ってなかったですよ。
もっとこう戦闘特化になるのかなーとか……いや、十分すぎる程に強いけどね。
「……あった」
敵をえっちらほっちら倒しながら進むこと2~3時間。
グランが草原にゴロンと転がる岩の前で足を止める。
「ここが入り口だ」
え、どこどこ?
って思ったら岩と地面の間にぽっかり穴が空いてるでやんの。
これ知らずに近寄ったら落ちるじゃん!怖いわっ。
「思ったよりも楽に来れたが……ま、気を抜かないで行こう。まじで数凄かったからな」
道中まったく苦労してないからねっ。
たぶん、この先みっちり敵詰まってるんだろうなあ……。
ちょ、ちょっと後ろから行こうかな?なんて……ちょ、タマさん押さないでっ!冗談だから!
こんな時まで以心伝心発揮しなくていーからっ。
「……」
まあ、そんな感じでタマさんと戯れながら穴に入って進み出した訳だけど……。
「……居ないな」
敵が居ないんですよ。
俺知ってる。
これフラグ立ったってやつだ!
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