第74話 「73話」
食べ終えたミカンの皮をそのへんに埋め、出発する準備を始める。
ゴブリンにコボルトときたら次はオークだ。
今の俺であれば苦戦することなく倒せる相手ではあるのだけど……。
「オークだけどさ、数を狩るの大変だよねー」
問題は例の岩がないので数を狩るのが大変ってことである。
早いところ盾を鍛えて魚をとりに行きたい俺にとっては結構な問題であったりする。
……ちょっと効果代が予想できないのであまりやりたくは無いけど、モンスターを呼び寄せる匂いを放つ果物を作るって手もあるっちゃある。
どうしたもんかなーと考えているとタマさんがトットットとこちらに近寄ってくる。
え、なに。抱っこかな?
「そうでもないニャ」
伸ばした俺の手をはたいてそう言うタマさん。
何かオークを大量に狩る良い方法でもあるんかしら。
「え、そうなの?」
「オーガと同じでオークも集落があるニャ」
「へーそうなんだ……」
ああ、そういやあったね。オーガの集落……ん?
「……ふーんっ!?」
え、それってもしかしてもしかすると……?
「ま、まさかタマさん集落を襲えと言うんじゃ……」
「その通りニャ」
「おう……」
そのまさかであった。
集落って確か長とか強い個体がいたりで難易度高いんじゃなかったっけ……?
オーガとオークの違いはあってもきういんじゃなかろうか。
「一応確認だけど推奨レベルはおいくつで……?」
「ソロなら30ニャー」
「あ、いけるね」
割と余裕そうでした。
「おうりゃっ」
そして実際余裕でした……。
たぶん今倒したのが長じゃないかな? ほかより大分体格よかったし……武器は相変わらず棍棒みたいのだったけど。
どうせなら鬼鉄製の装備付けてれば良いのになー。
なんて余裕かましていた時であった。
ふと、見慣れぬ姿をしたオークが目に入ったのだ。
「あれ? なんか変わった個体がいるな――」
そいつは他の個体と違って、ローブようなものを身に纏い、手には杖を持っていた。
そしてそいつは杖を俺にむけ、何事か叫んだ次の瞬間。
俺に向かって火線が伸びてきたのである。
「――うおおおぉぉっ!?」
咄嗟にそれを右腕で弾いた俺であったが……腕に火線が絡みつき、燃え始める。
「あっつういっ! ちょっ……も、燃えてないこれっ!??」
しかもこれ、よくよく見れば俺の腕自体が燃えだしているように見える。
火線が触れた部分が赤熱し、徐々に広がっているのだ。
……なんて分析していると余裕そうに見えるかも知れないけど。これめちゃくちゃ熱いです。
「燃えたニャー」
「水っ水っ! 水ぅぅぅっ! ……っお前だああああっ」
あまりの熱さに俺は水を求めて駆け回り……見当たらなかったので、そのオークの体に腕を突き刺すことにする。
とりあえず消せるだけの水分があれば良いのです……。
数分後、水筒に水があったのを思いだした俺は念の為右腕に水を掛け、火傷の様子を確かめていた。
「あー…………びっくりした」
「触れた部分がちょっと燃えたかニャー」
火傷……火傷って言っていいのかなこれ。
とにかく焼けた部分は黒く炭化しており、当初は痛みもそれなりにあった。
だが、俺の体は治癒力が高い。
それは火傷にも発揮されるようで、燃えてから数分経った今では痛みもなく、炭化した部分は新たな組織の再生が終わっていたりする。
炭化した部分をポンポンとほろって見れば、元通りの腕が現れる。
「うん……そうだよね、木だもんね。そりゃ燃えるよね」
大したダメージではなかったんだけど、地味にショックがでかい。
確かに俺の体は木だけど、まさかあそこまで普通に燃えるとは思って無かったのである。
生木とか燃えにくいんじゃなかったのかと……。
「あとで対策考えるニャ。 とりあえずさっきのをまた見かけたら、魔法使う前に倒すニャ」
「あい」
火を扱う強敵と相対する前に判明して良かったと考えよう……。
タマさんなら火への耐性を上げる方法とか知っているかもだし、あとで一緒に対策考えようと思う。
このあとオーガの集落も襲い目標の数を狩れたので今日はそこまでとなった。
そして翌日。
俺は昨晩から用意しておいた荷物の最終確認をしていた。
とは言ってもそこまで持っていく物は多くないので、念の為ざっと確認する程度だったりするが。
「えーと、寝間着と着替えと寝袋とー……水浴びも出来るらしいからお風呂セットもっと」
ギルドそばの雑貨屋さんは割と何でも揃うんだよね。
寝袋欲しかったので買って、ついでにお風呂セット何かもお出かけ用に買ってしまった。
「テントやら何やら必要なものはタマさんが用意するって言ってたけど……大丈夫かなあ」
俺の荷物が少ないのは他に必要そうな道具一式をタマさんが用意してくれるからである。
……たぶん大丈夫だと思うけどちょっぴり不安だ。
テントとかにゃんこサイズじゃないよね? それはそれで構わないけど。
「来たかニャ。 早速行くニャー」
少ない荷物をもって玄関に行けば既にタマさんがスタンバっていた。
てか……。
「ちょ、タマさん荷物すっごいな」
荷物の量がまじで半端ない。
俺が持ったとしても、でかすじゃね?ってぐらいに量がやばい。
「久しぶりに行くんだニャ。 せっかくだから色々用意したニャ」
「おー。 そりゃ楽しみ」
タマさんかなりお魚を楽しみにしているらしい。
テント一式に食器類やら調理器具やら色々持っていくそうだ。
……そう、なんとタマさんがお魚を料理してくれるのである。
嬉しさと怖さと期待と色んな感情でいっぱいです。
「……タマさん重くないの? 俺持つよ?」
「別に平気ニャー」
そんな夢一杯な何かがつまった荷物だけど、やっぱ重そうなんだよね。
タマさんの身体能力が俺よりずっと高いってのは分かっているけど、それでも体格差とか考えるとねえ……そんな訳で荷物持とうかと尋ねた訳だけどあえなく断られてしまった。
とりあえずダンジョン行きますかね。
「あ、あのあのタマさん」
「ニャ?」
そんな訳で俺とタマさんは荷物を持ってダンジョンへと向かっていたのだけども。
「荷物持たせて下さい……周りの視線が痛いです……」
「ニャ」
周りの視線がぐっさぐさ刺さるのです。
俺を見て指さしたり、ひそひそ言い合っているのがちらほらと視界に……。
ごっつい成人男性がちょっぴりの荷物を持って、その隣には明らかにキャパオーバーしてそうな荷物を背負うにゃんこが……絵面がやばいなんてもんじゃない。 下手すると衛兵とか呼ばれかねない……。
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