第67話 「66話」
「うん、よしよし。 まったく異常なしっと」
その後も次々やってくるゴブリンを千切っては投げ、千切っては投げと繰り返していたけど、盾に異常は見られなかった。
やっぱ職人さんがきっちり作ってくれた物だけあって良い盾だね。
最初に使った剣とはえらい違いだ。
……もっともあれは俺の使い方が悪かったのが主な原因だけどね。はっはっは。
「これで70匹ってとこかな」
時間にして1時間いかないぐらいかな?
そろそろ打ち止めらしくゴブリンの襲撃が止んだ。
狩った数は大雑把にしか数えてないけど、俺が70匹で新人達が20匹ってとこかな?
やっぱ数を狩るならこの方法が一番だよねえ。
精神衛生上はよろしくないけど……。
ただ一人で狩ってた時より大分ましだけどね。
新人達のことを気に掛けなきゃならないし、一人じゃないってのが大きいと思う。
「ウッドさん、あんた今レベルいく……いや、何でもない。忘れてくれ」
「ははは……まあ、秘密ってことで」
スオウさんが俺にレベルを聞こうとして、すぐに止める。
んまー俺もダンジョンシーカーなってそんな経ってないからね。なのにこんな戦いっぷりをしてたらそら気になるよね。ふふふのふ。
スオウさんはそんな感じでー……新人達はどんな感じかな? ウッドさんすげー!みたいな感じだと嬉しいんだけどー。
「……」
何かキュカちゃん黙りこくっちゃった。
心なしか顔色悪くない?
いや、ほんと真っ青よ?
「……」
元気っ子なマールちゃんまで黙っちゃった。
顔色は……そこまで悪くないかな。
「……」
ペールくんは逆にすっごい熱のこもった目でこちらを見ていますぞ。
頬も上気して赤いし、これは良い反応ですぞ。
「ええと」
「ひっ」
一番やばそうなキュカちゃん話しかけて見たけど、むっちゃ後ずさりされたんですけど。ひどい。
「キュカちゃんだっけ、顔色悪いけど大丈夫?」
でもそれぐらいじゃへこたれません。
心配そうな顔をして……出来てるよね?たぶん出来てると思うけど……。
まあ出来てるとしよう。とりあえずキュカちゃんに声を掛けてみる。
「っ……だ、だ……大丈夫、です」
え、なんか呼吸おかしいけど……まじで大丈夫これ。
なんてどうしたもんかとオロオロしていると、スオウさんが苦笑いしながら話しかけてきた。
「ウッドさん、あんまりうちの若いの虐めないでやってくれよ?」
ええー!?
えー……あー、うん。確かに。
そんなつもりは無かったけど、そんな感じなってたかも。
いや、俺としてはこう、くるっと手のひら返してすげー!みたいな感じを期待してただけなんだけどねー……なんかすまぬ。
「そんなつもりじゃ無かったんですが……ごめんね?」
すっごい勢いで頭ブンブン振られた。
とりあえず魔石を回収して、第二ラウンドに突入したんだけど……。
「うーん……」
3人共ずっと無言なんですよね。
時々こっちに視線を向けてはすぐ逸らすって感じでして、とても気まずいです。たすけて。
「不味いよなあ……」
それに何よりもね。
さっきは前二人の反応があれ過ぎたもんでスルーしてたけどさ。
熱のこもった目でこちらを見ていて、頬も上気して赤いしってどう考えてもダメじゃん!男じゃん!
やべえよ、やべえよ…………よし。気付かなかったことにしよう。
それよりもちょっとあの二人の誤解を解いて起きたい。俺、怖くなんかないよ?と。
どう誤解をとくか……物で釣るのはどうかとは思うけど、やっぱ果物をおすそ分けしてってのが一番効果ありそうよね?
いまは第二ラウンドの終盤入ったところぐらいかな、ってことはそろそろ休憩だろうし……うん、それがよさそうだ。
そんじゃスオウさん一言声を掛けてっと。
「スオウさん、これ終わったら休憩しますか?」
「ん? ……そうだな、休憩兼ねて昼食にするか。 おい! これ終わったら休憩だ! もう少しだから気張れよ」
「は、はい!」
くくく。俺特製?の果物の虜になるが良い。
ゴブリンから魔石を回収、でもってちょっと移動した所で昼食兼休憩を取ることになった。
やっぱゴブリンの死体の山を前にして食事をしようって人はおらん訳ですよ
。
まずはご飯を食べねばと宿で用意してもらった昼食をゴソゴソとあさり始める。
お、今日のはお肉いっぱいだ、やったぜ。
「うまうま」
大変美味しゅうございます。
「あの宿の飯は美味いからな」
「あ、スオウさんも泊まってるんですか?」
おんやスオウさん、宿の料理が美味しいの知っているってことはもしかして泊まってるのかな?
宿で見かけたことは無いけど、行動時間がずれてるんかね-?
「いや、何年か前まで使ってたんだ。今はパーティーの拠点で寝泊まりしてるよ」
「あ、なるほど」
あ、昔使ってたのね。
それなら納得です。
……ところでご飯そろそろ食い終わるんだけどなー。
「……」
ちらっと新人達へ視線を向けてみたけど、3人共あまり食が進んでないようだ。
てか一人と危うく目を合わせるところだった。超反射で回避した俺、ぐっじょぶ。
「……」
今度はスオウさんに視線で訴えかけてみた。
苦笑してらっしゃる。あ、何か言ってくれるぽいぞ。
「お前ら……食わないと持たないぞ? ほら、これも修行だと思って食え食え」
「ふぁ、ふぁい……」
んし、スオウさんに言われて新人達の食うペースがあがったぞっと。
食べ終わる前にスオウさんにちょっとお話しておこう。
「あのスオウさん良ければですが、食後に果物でも如何ですか……?」
「それはありがたいが……良いのかい? タマさんが何と言うか」
「大丈夫だと思います。 何せ今お腹壊してますから」
もう治ってそうだけどね。
まあ、治っていようがいまいが、ちょっとおすそ分けするぐらいなら何も言わないと思う。
爪は飛んでくるかもだけど。
「ああ、そうだったな……それじゃ貰おうかな? 実は前々から気になってはいたんだよ、ギルドの食堂で何度か見たからね」
「ははは、まあ目立ちますもんね……それじゃいきます」
何度か見られていたようだ。何か恥ずかしい。
目立つからしゃーないんだけどね。
ま、丁度良い感じで新人達の食事も終わりそうだし、とりあえず果物出しますかねー。
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