第19話 「18話」

結局あの後しこたま食って飲んだ俺であったが、日付が変わる前には何とか宿へと戻っていた。

かなり酔っていた為、足取りも怪しかったがどうにか部屋へとたどり着き、ベッドへとダイブする。 顎が痛い。

ベッドは相変わらずゴツゴツしていたが、俺はすぐに眠りについた。



「……んごっ」


そしてあっという間に朝である。

窓からばっちり差し込む朝日がまぶしいです。


「くぁ……おし、水浴びしよ」


幸い昨日の酒は残っていないようで、すっきりとした目覚めであった。

ただ体全体やら服やらなんやら酒臭い。 やはり水浴びは必須である……。


「それじゃ行ってきますね」


「はいよ。 ダンジョンシーカーなったそうだけど無理だけはするんじゃないよお」


「無理はしないんで大丈夫っすよー」


宿のおば……姉さんに挨拶を済ませダンジョンに向かう……その前に先日剣を買った店へと向かう。

昨日は帰って裏庭いって、昼食とって、即稽古に突入して、その後はご飯と酒……となってしまったので修理に出す暇がなかったのだ……ちょっと槍だけだと不安が、ね?

たぶん折れると思うんだ。


「お、この時間でもやってるやってる」


ありがたいことに早朝にも拘らず店はやっていた。

扉を潜ると昨日も対応してくれた店員が顔を出す。


「いらっしゃい……確か昨日の……なんぞ剣に問題でもあったかいの」


「いえいえ、どちらかと言うと問題あったのは自分の方でして……よっと。 剣を修理して貰いたいんですけど……お幾ら掛かります?」


そりゃ昨日の今日でまた来たら何かあったかと思うよね。

商品にはたぶん問題なかったんだけどね、使い手がね……ハハハ。


俺は手に持った剣を店員さんに見せ……曲がってたので鞘に入れらなかったんだよね。

あ、顔が引きつってらっしゃる……ですよねぇ、まさか昨日買ってこれだもんそうなるよね。


「お前さん……こりゃ直せなくはないが結構掛かるぞい? 買うよりは安いがのお……銀貨5枚ってところだの。 夕方には直るがどうするかの?」


「け、結構高いですね……でも夕方まで直るなら……お願いします」


おあー、昨日の収入が半分吹っ飛んだ。

高い、高いぞ……このままゴブリン1匹退治するごとに武器をひん曲げてたんじゃ2匹来た時点で赤字になっちゃう……。


「んむ。 んで、鈍器はどうする? 前にも言ったが特注するなら3日、それに金貨10枚ほど掛かるが……」


やっぱたっかいぞ!

あ、ちなみに金貨1枚は銀貨10枚ね、わかりやすくて良い。

それよりもっと安くしてください、お願いしますっ。


「ぶ、分割払いとか出来ます……?」


財布の中身を何度みようが金貨10枚なんて出てくるわけない。

一応稼ぎの10日分だけど、ゴリさんへの借金もあるし分割だろうが厳しいには変わりないんだけど……でも武器がないとじり貧な気がするんだ。

草刈りの最中に敵が絶対こないというなら問題ないけど、たぶん来るだろうし。 もし武器が壊れた状態で連続で来られるとやばいなんてもんじゃない。


そんなわけで何とか分割払いにしたいんだけど……む、無理かな?


「そいつは……ま、ええじゃろ」


「え? あ、ゴリさん!?」


んで店員さんだけど俺をじっと見てたと思ったら、ふって視線を俺の後ろに向けたんだよね。

軽く頷いたかと思うと、まさかのOKが出た。 不思議に思って振り返るとそこにいたのはゴリさんであった。


後ろなんで見えなかったけど、たぶん店員さんに何かしたのだろう。

そうでなければこうもあっさりOKが出るはずがない。


なんでここに居るのかは、おそらくギルド前を通った時に見られたんじゃないかな?

それで武器を修理するんだろうと予想して様子見に来たんだろう。


「ついでだ鎧も作ってもらっとけ」


なぬ。


「鈍器のほうは3日もあれば出来るが、鎧はしばらく掛かるぞい?」


「あん? そこらの鎧ぶった切りゃ早いだろうが」


鎧ぶった切るってゴリさん……いや、確かに右半分は鎧きれないから結果としては同じものが出来るだろうけどさ。

それって店員さん的にはどーなのさってお話で。


「……そりゃ一から作るよりは早いがの。 まあええわい、ほれ体のサイズも測るでこっちゃこい」


あ、意外とあっさり。

いいのかな……というかこの鎧おいくらするんです??




「しゃ、借金が……」


借金やべえ。 最初にゴリさんから借りた額の3倍になっておる……。


「うし、注文も終わったし早速狩りに行くぞ……と言いたいところだが」


ん? どうしたんです、ゴリさん?

ごそごそと武器を漁りだして……。


「鈍器出来るまで3日掛かるんだよなあ……それまでの間、剣はサブ武器として繋ぎの武器を何にするか……じいさん、確認するが鈍器はねえんだよな? 何なら丈夫な棒でも何でもいいんだが」


「ふむ……ちょっと待っとれ」


あ、剣はメイン武器じゃないんですね。

まあ使うと折れるからねっ! しょうがない。


「こいつはどうじゃ?」


そう言って店員さんが持ってきたのは1m程の鉄棒の先端にとげとげした物体がついたものであった。


「……傘歯車?」


「ほう。よう知っとるな……こいつはとある道具の一部に使う予定だったんだがの、急にとりつく側の仕様が変わったとかで使えなくなってのう……捨てるのも勿体ないで倉庫に放り込んでおったんじゃい」


よく見ればそのトゲトゲしたものは歯車であった。

刃物のように鋭くはないが、その加工された歯車部分は当たれば肉を引き裂き、骨を砕くだろう。

俺がゴブリン相手に使うには十分な武器となる。


「おいおい、じいさん錆びてるじゃねーか」


「ふん、錆は表面だけじゃわい。 落とせば問題なかろうて……かなりの力が掛かっても大丈夫なように作ってるでな、丈夫さは保証するぞい」


うむ、しばらく放置していたせいか錆がビッシリと浮かんでいる。

店員さん曰く表面だけとのことなので、磨けば大丈夫だろうが……。

まあ、多少錆びてても丈夫ならそれで充分なんだけどね、繋ぎに使うだけだし。


「そうか……よしじゃあそいつも貰おうか。 すぐ錆落とし頼めるかい?」


しゃ、借金が増えるぅっぅうっ。


「すぐ出来るわい、茶でも飲んで待っとれ」


うぅ……お茶がおいしい。

これ紅茶かなあ?

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