第14話 「13話」

そんなわけでやってきました、薬草がとれるエリア。


「敵がきたら教えてやる。 それまではおとなしく草刈っとけ」


「はい!」


ゴリさんありがとう!

いや、本当に助かりますわ。 これ一人だと警戒しながら草刈りすることになるんだもんなあ、やっぱパーティ必須だよねぇ……ところでまだ酒瓶が手にあるんですが、飲みながら警戒とか大丈夫なんでしょうか。


「基本戦闘には手を出さないからそのつもりでな。 死にそうになったら助けてやるよ」


「……ハイ」


ま、まあソウデスヨネ。

超がつくベテランに見守られながら敵と戦えるなんて、そんな機会そうそうないだろう。

しっかり戦わねば……ちょっぴり怖いけどねっ!



草刈りはじめて大体1時間が経過した。

はじめは見つかるか不安だったけど、そんな心配をよそに俺は順調に薬草を見つけていくことができていた。


「お、これも薬草。 こっちも薬草、ここにも……あ、これ毒草だ」


こんな感じでちょっと歩いては薬草を見つけ、刈ってる最中にさらに見つけと恐ろしいぐらい順調に薬草が見つかるのだ。

もしかして俺、才能があるのかも知れない。 近い将来草刈り名人と呼ばれる日もくるんじゃなかろうか。


「おめえ、薬草つっても種類あんだからな? ちゃんと分けておけよ」


「はい! 袋いくつか買っておいたんで大丈夫です」


ちゃんと事前準備は出来ているのだ。

雑貨屋さんで小袋をいくつか購入し、種類ごとに袋に放り込んでいってる。


あ、そうそうちなみにだけど……この薬草ってどうも根っこからとっちゃダメらしい。

根っこ残しておくと暫くするとまた薬草が生えてくるんだそうな、そうと知らずに根っこから引き抜こうとしてちょっと怒られてしまったよ、ハハハ。


まあ、そんな失敗は最初だけである。


「てかお前、薬草見つけんの上手いな。 やっぱ右半身のそれ関係してんのかね」


「いやあ、どうなんすかね。 もしそうだとすると嬉しいんすけど」


ゴリさんから見ても見つけるの上手いらしい。

右半身か……どうなんだろ、なんかこの辺一帯に似たような草がいっぱい生えてて、でも何か俺はぱっと見ただけですぐ区別がついちゃうんだけどよね……最初は才能あるんじゃないかと思ったけど、そうだね右半身の影響している可能性もあるか。


だとするとこの右半身やっぱ高性能だね、ちょっとだけほんとちょっとだけ不器用だけど!


「まあ、今日でどれだけ採れるかだなあ、多いようなら……おい、ウッド」


「うぇっ? は、はい何でしょう」


まあ滑り出しが順調なだけって話かもだしね……ってゴリさんどうしたんですかね、急に真顔になっちゃってもう。


「武器構えとけ、来たぞ」


「来た……はいっ!」


草刈りに夢中になりすぎてモンスターの存在を忘れていた。

いや、1時間も何もでなかったもんで……はい、ごめんなさい。


ゴリさんの言葉に一瞬遅れて武器を構えた俺。

するとあたりの茂みからガサゴソと物音がするではないか。


思ったよりも近くまで来ていたらしい。


俺が音のした茂みへと顔を向けたその瞬間、茂みから緑色の肌をした小人が飛び出してきて……俺とばっちり目があった。


ぎょろりとした顔のわりに大きな目、口は裂け牙が見えている。

腰には粗末な腰布、手には先が尖った棒きれをもちこちらへと向けている。

どうみてもゴブリンです。友好的には見えませんわ……。


しかも何だろう、警戒とかそんなのしないのだろうか。

それとも俺が狩りやすそうな獲物にでも見えたのだろうか、ゴブリンは俺を視界に入れると同時に一切ためらうことなく飛びかかってきたのだ。


「ぼやっとすんな防げ!」


「っくあ!? ……っうぉぉおおっ!!?」


ゴブリンと目があって固まってしまっていた俺は、ゴリさんの声にはっと我に返る。

だがそのときにはゴブリンは棒を振り上げ俺へと殴り掛かろうとしていた、俺は半ば反射的に盾を構えるとゴブリンの攻撃を受け止める……つもりだった。


ゴブリンの一撃はその華奢な見た目からは想像できないほどに強かった。

思っていた以上の威力に盾を持っていた手がはじかれ、盾を放しこそしなかったものの、俺は体制を崩してしまった。


そしてゴブリンはさらに追撃を加えようと棒を振りかぶる。

やばい! そう思うや否や俺は持っていた剣を刃筋なんて考えることもせず、ただ必死にゴブリンの顔めがけて叩きつけていた。


良く熟れた果実を地面にでも叩きつけたらこんな音がするのだろうか?

濡れた汚い音を立てて、ゴブリンの頭部は弾け飛んでいた。


「はぁっはぁっ……や、やった! やりましたよゴリラさん!!」


心臓ばっくばくであんな一瞬のことだったの息が上がっている、やばい……まじで死ぬかと思った。

ゴブリン怖すぎる、雑魚の代表格じゃなかったのか! 騙したね! と叫びたい……ま、まあちょっと情けなかったかもだけど、それでもなんとかなった……。


「最初どうなるかと思ったけど、いやもう本当焦った……あの、ゴリさん? お顔が怖いんですが」


ゴブリンを倒したと分かった途端に全身から力が抜けヘナヘナと地面に座り込んでしまう。

……でも勝てたんだ、喜びをかみしめ俺はゴリさんを振り返った。


笑顔で云々と頷くゴリさん。

俺が期待したのはそんな光景であったが、ゴリさんが怖い顔で俺のほうをじっと見つめていた。


戦い方がダメすぎたのだろうか?

いや、でも初めてだからあんなもん……デスヨネ?

恐る恐る伺うようにゴリさんに話掛けると、ゴリさんははっと気づいたように表情をもとに戻し、こちらへ近寄ってきたかと思うと肩をぽんと叩く。


「……まあ、初めてにしちゃ上出来だ。 解体用のナイフは買ったな? 教えてやるから心臓の辺りにある石を取り出せ」


あーお、解体がありましたね……。

いや、まってまって。これまじまじと見るとかなりグロいんですけど。

首から上がぶっ飛んでるのにまだ足がビクンビクンと跳ねてる……え、この状態にナイフぶっ刺すんです??


あ、ゴリさん俺の手をつかんで何を……あぁぁぁぁっ!?

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