魔物の記憶

「ねえ、魔物さん、魔物さんには名前ってないの?」


「名ですか?ありませんね。通り名…みたいな物はありますが…」


「どんなの?」


「魔眼王、そう呼ばれています。おそらくこの眼のせいでしょう…どうされました?」


「可愛くないなーって…それに呼びづらいわ。」


「そうですか?申し訳ございません…。」


「んー…じゃあ私が着けてあげるよ!うん、そうしよう。」


「いけません魔王様!魔物の名付けとはとても大切な儀式なのですよ!魔王様から与えられる名となると尚更です!そう言うのは大切な相手が出来るまで取っておくべきです!」


「ふふっ…」


「笑いごとではありません!」


「うん、ごめんね。家族ってこんな感じなのかなって思っちゃって……」


「魔王様…」


「あのね、魔物さん…私にとって魔物さんはとても大切な魔物さんなんだよ?だって歴代最弱の魔王に見捨てずに付いて来てくれたんだもの…だからね?私にとって貴方以上に大切な相手は出来ないと思うの…。だからお願い、受け取って?」


「………わかりました…。」


「うん…それでは、こほん…貴殿には魔王よりトド村の名を授けます……そしてトド村、貴殿に魔王から最後の命を……うんうん、お願いをします。」


「魔王様?最後とはどう言う…」


「生きて…それとごめんなさい。たぶんその名前は貴方の事をとても弱くしてしまう…でもね、強いより弱い方が人には受け入れられやすいと思うの…だから生きてね。」


「魔王様!」


魔王の城を光が飲み込む。


一匹の魔物は大切な主人がその光に消される様を、その小さな体に守られながら、ただ見ている事しか出来なかった。

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