聖剣の輝き 後編

「お前は危険だ。俺にとっても…魔王様にとっても…」


「そうですか…で?」


「本気で殺す!」


空気がより嫌な物に変わって行く。


それと同時に魔物の姿も変化する。


体は数十倍にも大きくなり、ふわふわの体毛は抜け落ち白くブヨブヨしたゴムのような皮膚に覆われる。


口だと思っていた部位は大きく開かれ、中から黒い球体が…大きな目玉がギョロリと出てくる。


「殺す…殺すぞ!この魔眼王トド村がお前を殺す!」


聞くだけで嫌悪する程不気味な声で魔物は叫び散らす。


「ええ、やってみると良いです…出来るならな!」


先に動いたのはアルカだった。


割れる程の勢いで地を蹴り、真っ正面から切りかかる。


そんなアルカの先制攻撃に遅れてトド村も動き出す。


先程は捉えることのできなかった剣撃を、しかし今はしっかりと捉えていた。


黒い魔眼でアルカを見る。


自身を切り裂いた木の枝が、仄かに光を放つソレが尋常じゃない速さで振るわれる。


魔物はその一太刀をギリギリで避け、反撃に黒い球状の物を形成、撃ち出す。


だが先程同様にソレがアルカに当たることはない。


木の枝で軽くあしらわれ、まるで風船が割れるかのように霧散する。


「やはり、無理か…ならこれでどうだ!」


魔物の魔眼が怪しく光る。


「我が眼の異能は空間支配!お前にかかる重力を今支配した!潰れろ!」


見えない壁に押し潰されアルカは地面にめり込む。


「これで消し飛べ!」


更に追い討ちで放たれる一際大きな黒い球体がアルカに直撃した。


それと同時に地面が大きく砕け砂埃が舞う。


「あーあ、服…破けてしまいました…高かったのに…」


しかし少女はなんて事ないように砂埃の中から現れた。


服はボロボロになっていると言うのに、肌には一切の傷がない。


「終わりましたか?終わりましたよね。なら次は私の番です。」


言って構えられた木の枝が強い光を放つ。


魔物はソレを知っていた。


先代の魔王を滅ぼしたその光を、魔を殺し人を癒すその聖なる光を見た事があった。


「なぜ…?それは聖剣の…まさかお前、今代の勇者アルカトラズか!」


返される答えはない。


膨大な光が木の枝に集まって行く。


魔物の体が震える。


本能がアレはヤバいと告げていた。


逃げなければと考えているのに、体は生きる事を諦めているかのように動かない。


これから自分は死ぬのだと思うと、自然、魔物の大きな目からは涙が流れて来た。


「ダメだ…ダメだダメだ…死にたくない…死ねない…ダメなんだ…嫌だ…。」


口からこ零れるだらしのない声が勝手に命乞いの言葉を発する。


「死ぬのが怖いんですか?ですが諦めなさい、お前もやった事です。」


とても冷たい返答。


アルカは静かに木の枝を振り上げ


「あの世でラズさんに懺悔しなさい!」


膨大なエネルギーの塊が振り下ろされる…その瞬間


「ふぁ〜…ん、あれ?…アルカ…ちゃん?何してるの?」


「へ?………あ…。」


聞き慣れた少女の声に気を取られ、聖剣から放たれた光はトド村を掠めて明後日の方向へ飛んで行く。


山を破り天を裂く巨大な光の柱を、アルカは呆然と見つめる。


「わー、凄い綺麗だね!」


ラズはソレにはしゃぎ


「た……助かっ……た…」


トド村は失神する。


薄れ行く意識の中、一匹の魔物は今後は穏やかに生きる事を強く誓った…



【第二話、完】

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