聖剣の輝き 前編


『強い力とは使うだけで世界になんらかの影響を与えます。ですから約束してください勇者様、その力を決して感情に任せて使わないと。』


それは勇者がまだ目覚めて間もない頃に、意思を持つ一振りの剣と交わした約束



なぜ?


頭を埋め尽くすのは疑問だけ。


地面を濡らす赤を呆然と眺めただひたすら呟く


「なぜ?」


「なぜ?面白い事を言う、あの魔術師には俺の呪いが効いていなかった。と言う呪いがな。だから殺した。異分子は排除する、当然だろう?」


魔物は語る。


楽しそうに、語る。


殺した理由を語る。


「なぜ?」


「おいおい…なんだ?まさかお前、人が死ぬのを初めて見たのか?てっきりあの魔術師が俺を殺すために仲間を呼んで来たのかと思ったんだが…考えすぎだったか?」


魔物が何かを言っているが、アルカの耳には届かない。


頭の中には今もなお疑問が埋め尽くす…


なぜ彼女は死んだのか?


なぜこの魔物は彼女を殺したのか?


なぜ彼女は私に村の事を相談したのか?


なぜ私は気づけなかったのか?


なぜ私は何もしないのか?


なぜ、なぜ、なぜ、なぜ…………


頭を覆う疑問は増えていく。


「まあ良い、なんであれお前も死ぬんだからな。」


邪悪に笑う魔物は何やら黒い球状の物を飛ばす。


常人では目視出来ない程のスピードで放たれた黒い何か、おそらくラズの体に風穴を空けたものであろうソレは、しかし何かに当たることはなく、何も無い空中で霧散した。


「何だ?」


魔物は疑問に思い原因を探るべく、辺りを見回す。


しかし何もない、あるのはただ一人、膝を地面に付け、力無く俯く少女のみ。


「何で…殺したんですか?」


再びの問いに魔物は苛だたしそうに顔を歪める。


「だからさっきも説明したろ?異分子だからだ!邪魔だったからだよ!理由なんぞそれだけで…っ!」


魔物の言葉が途中で途切れる。


それは気付いたからだ、自分の体が切られた事に…


焼けるような痛み、魔物独特の異様な色をした血液が白い体毛を染めていた。


しかし誰に切られたのか?


「邪魔なら殺していいんですか?なら…」


魔物は驚愕する。


自身を切った者が目の前の少女だと気付いたから。


しかもでだ。


少女は枝に着いた異様な色の血液を払うと、とても冷たい視線で魔物を睨む。


「私もお前を殺す事にしますね。」

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