勇者、初めて見る

「お客人、どうかなされましたか?」


「「?」」


当初の予定だった魔物退治も中止となり、やる事がなくなったアルカはラズの家に行く事になり移動を開始しようとした矢先、背後からの声に呼び止められた。


「失礼しました。驚かせてるつもりはなかったのですが、村の前で何やら話し込んでおられる様子だったので。」


声の主は、村長にして魔王の配下であるトド村だ。


つぶらな瞳に白い毛に覆われた体は愛嬌がありどう見てもアザラシ、しかも赤ちゃんアザラシにしか見えず、とても魔物には見えない


「ら、らららら、ラズさん見てください!喋ってます!喋ってますよ!アザラシが!しかもかなり流暢に!」


「アルカちゃん、村長だもん喋るよ。」


「そうなんですか?」


「うん、そうだよ。何も珍しくないよ?それよりもう行こう。」


アルカの手を引くラズ。


それに何となく違和感を感じた。


「あのラズさ…」


「おや?ラズと言えば…村外れに住んでいる魔術師でしたか?」


「ええ、まあ、はい。」


「これはこれは、お会いするのは初めてでしたね。ご存知かと思いますが私は村長のトド村です。」


「はい、存じてます。」


「ところで…外から帰られたように見えたのですが…?」


「まあ、はい。」


「おや、そうでしたか。なるほど……お前?」


突如として、その場の全てが一変する。


先程まで和やかだった空気が一瞬にして重たい物へと変わる。


その変化に驚き、アルカが瞬きをした間に…ラズの身体が後方へ吹き飛んだ。


華奢な体が地面を転がり、そして止まった。


鼻をつく生臭い臭い、赤い水たまりを作る小さな少女の体には大きな風穴が空いていた……


「ラ…ズ……さ…ん…?」



next story【聖剣の輝き】

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