勇者、憤る

「そうと決まれば、まずは準備をします。」


「あの、勇…アルカちゃんは、聖剣はどうしたの?」


魔術師の少女、ラズの素朴な疑問に勇者アルカは言い澱む。


「そうですね…方向性の違いで解散しました…」


「ん???」


「まあ無い物の事は良いじゃないですか!ほら、武器屋に着きましたよ。」


頑丈そうな木製の建物、看板には武器屋の文字、店内に並ぶ様々な武器を眺める2人。


「色々ありますね。」


「そうだね。どれにするの?」


「そうですね…やっぱり剣…は高いのでこのナイフですかね。」


剣一本300Gゴールド、対して所持金3G…この所持金では売れ残り処理品の切れ味の悪そうなナイフ2Gしか買えない。


ピカピカの剣を恨めしそうに見ながら、アルカはしぶしぶナイフをレジへと持って行く。


「いらっしゃい。ナイフ一本ね!それじゃギルドの登録証を提示してくれ。」


「へ?…えと、何故ですか?」


「おや、お嬢ちゃん知らないのかい?武器屋はギルドに登録しないと利用出来ないんだよ。犯罪対策でね。」


豪快に笑う武器屋のおじさんに、アルカは謝罪しラズの元へ。


「ラズさんってギルドの登録証持ってます?」


「うんうん、私魔術師だから身分証は魔女免許しか持ってない。」


「そうですか…」


「あ、あれ?武器は?」


重い足取りで店を出るアルカは落ちていた木の枝を手に取った。


「ふ…ふふ…これが今から私の武器です。」


この時、勇者アルカは割と真剣に打倒聖剣を考えた。



【第一話、完】

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