勇者、決意する

「私は何も見なかった…良し!」


なかなかしつこかった魔術師を撒き、勇者はギルドの扉を開けた。


室内は広く、たくさんの人で賑わっている。


その場にいる誰も彼もが、木製の大きなボードに貼られている依頼書を吟味しているようだった。


「えーと、ギルドの利用の仕方は…気に入った仕事の書かれた紙を受け付けに持って行く…そうだ、登録証、登録証を出しておかなければ。」


最後にギルドを利用したのはかなり前だった事もあり、少し戸惑いつつも張り付けられた依頼書を眺める。


「ふーむ…討伐、護衛、採取にお手伝い…ここはお手伝いにしましょう。」


見た中で簡単そうな物をボードから取ると、勇者は受け付けへ向かう。


そこから先は簡単だ。


依頼書と登録証を受け付けに渡して受領書を発行して貰えば…


「この登録証!あなた様はもしや勇者様!?」


「あなたもですか!何故私が…じゃない。私を勇者と呼ぶんですか!」


「いえ、登録者名に。」


言われて見てみると、確かに登録者名の欄に【勇者】と書かれている。


彼女はそれで思い出した。


この登録証を作ったのは、かの聖剣アスカロンだったという事を…


「あ、ははははは……失礼します。」


登録証をひったくると勇者はギルドから飛び出した。


顔が熱い、羞恥のあまり目から自然と涙が出てくる。


日の傾き始めた街の中を駆けながら、勇者は心に強く誓う。


「カロンさんを…折る…!」


next story 【勇者、引き受ける】


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