一章

第一話

勇者、装備品を一掃する

北の果ての山岳地帯にまるで隠れるように魔王の城は存在する。


場所が場所なうえ、強力な魔物を生み出し続ける魔王の城周辺は、当然人の住める空間ではない。


そのため一番近い街でも移動に2週間はかかる。


しかしその距離を、勇者と聖剣は約一日足らずで移動を終えていた。


「あの、勇者様?魔王…本当に倒さないんですか?」


街に着くや否やそう聞いてくる聖剣に、勇者は


「倒さないです。」


と即答する。


「ええ…」


木造にレンガ造り、様々な建造物が立ち並ぶ、広く栄えたその街の大通りを進む一人と一振り。


「カロンさん、私は普通に生きて行くことにしました。」


「そんな!困ります!それでは世界はどうするんですか?それに僕はどうなります!聖剣としての使命を全うできないじゃないですか!」


「それについては考えがあります。」


「考えですか?」


「はい、ここです。」


誇らしげに胸を張り、勇者が指差すのは一軒の建物、立て看板には【質屋】の文字。


「え?あの、え?勇者様?どう言う意味ですか?」


「頑張って…新しい担い手を見つけてくださいね…。」


「いやいや、嘘ですよね?嘘ですよね勇者様。まさか、まさかそんな勇者的にアウトな事しませんよね!」


「カロンさん…どうか安らかに、私の生活のための軍資金になってください。」



next story【勇者、言い切る】

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