待ち伏せ{済}

 ここは、ルドバの街の北東に位置する森の中。


 涼香たちはエルラスタに向かって歩いていた。


 ガディスは涼香たちのあとをつけている。


 すると要は、エルラスタまであとどのくらいでつくのか気になり、クルテルに聞いた。


「クルテルさん。まだ歩くのか?あとどのくらいで、エルラスタにつくんだ?」


「要。そうだね。もう少し歩くけど疲れたのかい?」


「んーそういう訳じゃないけど。ただ、夜までにつくのかなぁって」


 そう話をしながら歩いているとクルテルは、周囲から放たれている殺気に気づき辺りを見渡した。


「要。涼香……」


「クルテル。どうしたんだ?」


「どうしたの?」


「これは……。いつの間にか、連中に囲まれていたらしいね」


「連中って誰なんだ?」


「恐らくは、ブレグラン国の兵たちだとは思うんだけど。もしかしたら奴ら、待ち伏せてたのかもしれない」


「クルテルさん。もしそうなら、このままじゃ。……」


 そう言うと涼香たちは、辺りを警戒をしながら、相手の出方を伺っていた。


 ガディスもその気配に気づいた。


(これは……。よりにもよって、まさか奴らがこんなところに……。おそらく狙いは、あのドラゴナードの者だろう。

 だが、このままではあの女も巻き添えになる。ボンゼル様に、あの女を傷一つ付けることなく連れてこいと言われているしな)


 そうガディスが思い考えているとブレグラン国の兵たちは、涼香たちを囲いおいつめ近づいていった。


 そしてブレグラン国の兵の1人が涼香たちの側までくると、


「ふん。やはりここで網を張っておいて正解だった」


 その兵士は少し間をおき、さらに話しだす。


「龍の里の者が逃げ込むとすればエルラスタか、龍神バルロス様が支配している、いずれかの領地となるからな」


 そう言うとクルテルの方をみた。


 ♣︎

 ♧


 この男はゴルボラ=ギレフといい、年齢は不詳。そして、ブレグラン国の兵士長である。


 ♧

 ♣︎


 クルテルはゴルボラと兵士たちの動きを警戒している。


「ふぅ。これは、私が狙いのようですね。さて、どうしましょうか」


「ファハハハハハッ!どうするつもりだ?龍は封印した。したがって、お前たちは力が使えないはずだが?」


 そう言いゴルボラはクルテルをみたあと、涼香と要に視線をむける。


「それとも。そこの2人がお前に手を貸すとでもいうのか?」


「ふふ……。さあ、どうでしょう。もし、私が魔法を放てるとしたら?」


「ふん。あり得ん。まぁ、近くに龍がいれば話は別だがな」


 そう言われクルテルは、ゴルボラをみたあと不敵な笑みをうかべた。


「そう、近くに龍がいれば私は力を存分にふるえますね。ククク……」


「ん?なにがおかしいのだ。お前なにを考えている?」


 そう言うとゴルボラは、クルテルがあまりにも余裕な顔をみせていたので、龍がどこかに隠れているのではと辺りを見渡した。


 そしてガディスはその光景をみて不思議におもった。


「んーどういう事だ?今の話だと。ブレグラン国の者たちが、ドラゴナードの住む龍の里を襲ったという事なのか?」


 そうガディスが考えている。


 するとゴルボラは、クルテルを見下すようにみた。


「ふっ。まぁいい。お前がみせているその余裕は、恐らくはハッタリだろうからな」


 そう言うとゴルボラは右手をあげる。


「こいつらを始末しろ⁉︎」


 そう言われ待機していた兵士たは、一斉に涼香たちに襲いかかった。

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