要の能力{済}

 ここは、ファストル城から北西に数キロはなれた森の中。


 あれから2日がたち涼香と要は、野宿をしながら龍の里にむかって歩いていた。


「あ〜もうやだ〜!野宿なんて〜。グスン。みたこともないような、変な虫がいるし〜」


「涼香。そう言っても、この状況じゃ。野宿しか方法がないしなぁ」


「うん。それは分かってるんだけどね。はぁ……」


 色々と話しながら歩いていると数匹のツノのはえた獣が、涼香と要の周りを囲み襲いかかろうとしていた。


「グルルル……」


「いつの間に獣が、俺たちを囲んでたんだ⁉︎」


「ちょ、ちょっと!これじゃ囲まれて逃げられない。どうしよう……」


「こ、このままじゃ。あの獣のエサになっちまう」


 すると数匹の獣はキバをむきだし、涼香と要に襲いかかろうとしている。


「ガッオオオォォーォン‼︎」


 すると獣たちは雄叫びをあげ、

 一斉に2人にとびかかった。


「キャァーーイヤァーーーーー‼︎」


「クソォッ!このままじゃ。ん?あっ、そういえば」


 要は自分の力のことを思いだした。


「よし!多分、大丈夫だと思う。城で少し試したし」


 要は涼香をかばいながら、頭で炎をイメージし両手に力をそそいだ。


 すると、要の両方の手のひらに炎があらわれた。


「あたれぇーーー‼︎」


 そう言いながら要は数匹の獣めがけ、身体を軸にし円を描くように炎を放った。


 その放たれた炎は数匹の獣にあたるが、威力がなかったため50メートルしか後退さることができなかった。


 そして獣たちは擦りキズを負った程度だった。


「要。今のはなに?炎なの?」


「ああ。でも、まだこの力は完璧に使いこなせてない」


 要は自分の手のひらをみながら、どう獣たちをたおしたらいいのかと考えている。


 攻撃をうけた獣たちは怒りを露わにし、ジリジリと2人を射程圏にとらえようとしていた。


「クソッ⁉︎このままじゃ。涼香は力が使えないだろうし。どうしたらいいっていうんだよぉ」


「要……。このままじゃ。ヒクッ。うっ……」


 涼香はブルブルと震えながら、要の背中によりそっている。


「涼香。クッ。やっぱ考えてるひまはねぇよな。できるか分からない。だけど、一か八かやってみるしかないか」


 要は両手をひろげ炎をイメージする。


(もっと強そうな炎をイメージしないと。メラメラと燃え盛るような強い炎を……)


 すると業火のごとき炎が、要のてのひらにあらわれる。


 それを確認すると要は、どう攻撃するかイメージし獣たちに放った。


 そして要のイメージどおり、無数の炎が螺旋らせんを描きながら数匹の獣にあたっていく。


「グガオォォーォン‼︎」


 すると、数匹の獣は雄叫びをあげた。


 数匹の獣のうちの3匹は、たおすことができた。だが、残りの獣たちは軽度のダメージを負っただけだった。


 すると獣たちはさらに怒り狂い、要と涼香に襲いかかろうとしていた。


「やっぱ、こんなに数がいたんじゃ、いくらなんでも倒すのはムリだ。このままじゃ、この獣たちに喰いころされる。ど、どうしろっていうんだよーー⁉︎」


「………」


「涼香………。クソッ‼︎」


 どうこの場を切りぬけたらいいのかと、要は自問自答をくり返している。


 すると獣たちは大きな口をあけ、涼香と要めがけ一斉にとびかかった。

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