交渉2(デュノア視点)
今回の戦争を仕掛けたのはこちらドワーフ側、しかも奇襲に近い形で攻め込んだため、被害を受けているのは、彼らの統治する領土内だけである。
本来であれば、俺が面会を求めた事を罠と考え、顔を合わせる事すら叶わなかったはずだ。 それが叶ったのは道中で出会った乱暴な女性と、白髪の女性が懸命に王に訴えかけてくれたからと解釈し、同時にこの機会を逃すまいと用意していた言葉を述べる。
「国王様。 私は言葉を飾りながらの会話は、うまくできる自信がありません、気分を害されるかもしれませんが、私がこの国に来た理由を率直に申し上げます。 ………我々の国を、どうか助けては下さいませんか?」
「それは、私たちに戦争を止めろという意味かなデュノア殿? 言いたくはないが、今回の戦争で一番の被害者は我々の方だと思うのだが、何の賠償もないまま手を引けと?」
眉間に皺を寄せ、鋭い視線を飛ばしてきた薬師寺国王の声には僅かながら怒りの感情が感じ取れた。 しかし、コチラも臆することなく言葉を返す。
「いえ、そうではありません。 実は、戦争を仕掛けたのは確かに我々の国の者ではありますが、そこに国王の意志はありません」
「……同盟目前だったにもかかわらず、突如破棄するだけではなく、戦争まで仕掛けてきた国の大使でもないアナタの言葉を信じろと? ああ、そういえば、その大使も私達の国唯一の男性である菊池竜也を害そうとしていましたね。 これ以上我々から何を奪うおつもりなのかな?」
皮肉がこもったこの言葉に対してデュノアは言葉に詰まる。 向かい合った薬師寺国王の目からは憎悪や憎しみに似た感情が読み取れたが、我々の国が行った事を考えれば、薬師寺国王の怒りも当然だろう。 だが、ここで引く訳にはいかないとデュノアは再び言葉を発した。
「ですが、そんなひどい国と知りつつ薬師寺様は私に会ってくれた。 それは我々の国に対して何か交渉の余地があるとお考えになったからではないですか?」
今度は薬師寺国王が言葉に詰まる番だった。 その様子を好機とみて、カバンから素早く一通の手紙を取り出す。
「国王から預かった親書です。 どうかお読みください」
秘書が俺から親書を受け取り国王へと手渡す。 手に取った薬師寺国王は、何も言わずに封を開け、親書に目を通し始めた。
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