薬師寺の企み4(秘書視点)
「どうした? 顔色が悪いようだが?」
ブルブルと身震いする私の心を見透かすように笑みを浮かべながら薬師寺様は声を掛ける。 見た目は幼い子供にしか見えないが、その笑みは幼さから遠い位置にあった。
「いえ、なんでもありません。 お気遣いありがとうございます」
「なるほど確かに話がそれたからな、お前が気にするのも頷ける。 ……話を戻そう、この戦争を演習として処理する所までは話したよな」
私が心中穏やかではなかったことを、薬師寺様は、話を逸らしたことに対する抗議の声ととらえたらしい。 それならば私も秘書として思考を切り替えて言葉を返すべきだろう。
「はい、ですが被害が少なからず出ていますが本当に演習として成立するのでしょうか? いろいろと問題がありそうな気がするのですが」
「成立させる。 今現在の死者数は両軍ともにゼロだ。 戦場に出たドワーフは殺すのではなく捕縛している。 対物被害も許容範囲内だ。 問題ない」
「ですが、仮に無事に戦争を終結させて無事に同盟が結べたとしても反乱がおこらない保証は無いのでは?」
「初めに言っただろう? 全て説明しては夜が明けると。 先ほども言ったが、もちろん根回しや小細工はしている。 それに椎名から念話があったがのだがドワーフを穏便に支配するための最後の仕掛けが自らやってくるらしい」
「仕掛けですか?」
「ああ、まあ見ていろ。 これからもっと、この戦争モドキを面白くしてやる」
薬師寺様は、ニヤリと最高に悪い表情を浮かべつつ、椎名様の到着を心の底から楽しみにしているようだった。
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