薬師寺の企み2(秘書視点)
薬師寺様は、何を言っているのだろうか? 兵士をすでに配置している? 意味が分からない。 確か、学生に向けての念話は、援護は期待できないような内容だったはずだ。
私は、薬師寺様の言葉の意味が呑み込めずにフリーズしていると、その様子がたまらなくおかしかったのだろう、薬師寺様はクスクスと笑いだした。
「反応としては満点だが、あまり私を笑わせるな。 立場上、腹を抱えて笑うなんて、はしたないマネはできないんだ、もう少しリアクションを薄めろ」
「すみません、ですが薬師寺様。 聞き耳を立てていたわけではないのですが、たしか学生たちには、攻めてくるゴーレムの数が想定以上だったため支援に来る騎士、冒険者が不足しているとお伝えしていたように記憶しているのですが……あれは、いったい何だったのでしょうか?」
「そんなもの嘘に決まっているだろう? 確かに学生だけで対応するならば脅威となるだろうが、こちらは、国の全兵力を配置しているんだぞ。 全国民が400人にも満たない種族が、例え人工生物を戦争に投下してきたところで、まともに戦って我々の国の相手になる訳が無いだろう?」
薬師寺様のその言葉で、私は再び言葉を失った。 一気に蹴散らせるほどの戦力差があるのならば、一体何のために学生達を戦わせているのだろうか?
「なんという……では、何のために学生に前線など守らせているのです?」
「防衛教育の一環のためだ。 この事に対する利点は大きい。 単純に練度の向上だけではなく、中には的確に対応できる者や、学生に不相応な戦力を持った者がいるだろう。 それら全てが通常の演習では、学生間の報告で済ませていたが、今回は先ほども言ったように班全てに兵を潜ませているため、学生間の曖昧な報告ではなく第三者から正確に報告される。 つまり今まで見落としていた隠れた実力者や現在の学生の戦闘力や連携など練度不足な部分が全て分かるため、今後の学生の教育方針をとりやすく、かつ実力がある者は確実に特殊科へと引き抜けるメリットがある」
「なるほど」
「それだけではない、今回学生を主として置いている最大の理由は、今回ドワーフから宣戦布告を受けて始めた戦争を、合同演習として無かったことにするためだ。 事実、学生たちには今回の戦争を同盟を結ぶにあたっての合同演習と伝えてある」
「……………はい?」
本日、二度目の衝撃を受けた私は、再び間抜けな声を出して首を傾げた。
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