朝食ー2
「竜也、どうかしたのか?」
「いや、別に何でもないです」
何時までも座らぬ俺に対して見かねたのか、薬師寺さんが言葉をかける。 目の前に自分の婚約者がいるにもかかわらず、椎名の事を考えていました。 などとは言えず、給仕として薬師寺さんの後ろに控えていた椎名から視線を外して薬師寺さんと向かい合い椅子に座る。
「失礼いたします」
声を掛けテーブルの上に食事を並べる椎名は並べ終わると再び後方で待機する。 その光景に俺は落ち着かないのだが、薬師寺さんは気にも留めずに対面で食事を始めた。
「ところで急で悪いのだが今夜は著名人を集めたパーティーがある。 竜也も出席してもらうからそのつもりでいておいてくれ」
「え? なんですって?」
食事の途中で薬師寺さんが何気なく言い放った一言があまりにもだったため、寝起きのため聞き違えたのかと思い思わず聞き返す。
「聞き取れなかったか? 今夜のパーティーにお前も出席してもらうと言ったんだ」
「……いきなりすぎませんか?」
「私なりのサプライズだ、驚いただろ?」
サプライズすぎる。 確かに驚きはしたが、本当に驚いただけだ。 嬉しさなどの感情が後に続かない。 薬師寺さんは話は終わったといった態度で席を立つ。 見るといつの間にやら薬師寺さんの皿は空になっていた。
「椎名、着付けを頼む。 式典用のやつだ」
薬師寺さんの声に素早く反応して椎名は魔術で着付けを行う。 椎名が指を鳴らした瞬間に薬師寺さんは式典用の衣装に身を包んでいた。
「どこかへ行かれるんですか?」
「今回のパーティーは私が主催だからな、これから打ち合わせだ。 それでは行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
椎名は部屋から出る薬師寺さんを深々とお辞儀をして見送った。
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