朝ー3

「ですが、本音を言いますとまだ慣れてないんですけどね、 特に最初に5人しか男がいないと言われた時は何を言っているのか分かりませんでしたよ」


 この世界の常識である男の減少、それすら俺は知らなかった。 まあ、別の世界から来た俺は知るはずが無いのだが、この世界では常識らしくそれを知らない俺は尋常じゃないくらい心配された。


「冷静に考えてみれば人口に対して男性の数が少なすぎますよね? どうやって維持してきたんです?」


 5人しかいないのに十数億の人口はあまりにも多すぎる。 正直に言えば男女の営みだけではとてもじゃないが無理だろう。 人間が魔族のように長寿だったら分からんでもないが、どうやら、そういう事でもないらしい。


「私は専門ではないので、詳しい仕組みは知りませんが人体複製という技術を使って増やしています」


「人体複製?」


 聞いたことがない言葉に眉を潜めて首をかしげる。


「簡単に言うと、男女間ではなく一般的にカプセルの中から人間が生まれるんです」


「……何それ?」


 想像が出来なさすぎる? 俺の知っている人間とは大きく違う進化を遂げたのだろうか? そもそもカプセルって何だ? 男女間から生まれないと言っている以上、人間の器官ではないのだろうけれど。


 木乃美さんの言葉に、より深く眉間にしわを寄せて考え込む。 すると木乃美さんは説明を続けてくれた。


「本当に簡単に説明しますが、今、学校で科学の授業を習っていますよね」


「ああ、 習っていますね」


「その科学技術を使って人間を増やす方法を人体複製と言います」


「……んん?」


 科学技術とは極めたら人間すら増やせるものだったのか? 授業の内容すら危うい俺では理解できる範囲を完全に超えているので分からないが。 人間を生み出すとか神の領域じゃないか、 科学技術スゲーな。


 ……ちょっと待て。 しかし、そうなるとだ。


「じゃあ、今の男女の間では子供って作られていないの?」


「そういうわけではないですよ。 現在の王様も複製体ではないですし、その周辺を固めている近衛隊にも複製体じゃない人間は数名います」


 木乃美さんは複製たいという言葉で濁したが、それは、俺の知っている子供を作る方法という認識で良いのだろうか? この世界の常識はいまいち馴染まないので質問したいのだが、このことに関しては、うかつに質問できない問題だから困る。

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