ガールズ・アット・ジ・エッジ

作者 犬怪寅日子

私たちは皆、主役であり傍観者である。

  • ★★★ Excellent!!!



人間が生きるということは自分の人生の主役であり他人の人生の傍観者である。
それは乱暴に切り捨てて仕舞えば自分の見るものが真実であり見えないものは存在しないということでもある。

本作は風俗嬢がボーイを殺し逃走する事件を軸に進む。しかし私たちはなかなか核心に近付けない。風俗嬢、ボーイ、雇われ店長など語り部が変わっていき、それぞれの人生を内側から目の当たりにする、それが事件から私たちを遠ざけるからである。
見える世界が少しずつ変わることでやっと物語の全容が浮き彫りになってくる仕組みだ。
物語の仕組みであり人生の本質だ。主役の目からは傍観者の世界は見えない、逆も然り。それでも私たちは世界を総合的に見たくて相手の立場を考えてみたり、自分自身を他人かのように引きで眺めてみたりする。そんなものだったな、と改めて思い出した。

そして人間として生きる上で重要になる「性」についても本作では真正面から向き合っている。
風俗嬢が多く登場するので必然的に「女性性」に重きが置かれる。かと、思って読んでいたらそんなこともないので、益々続きが気になってしまった。
女性として生きてる上で女の性を商売道具にすることへの必然と不自然さを描き切っていると思う。
例えば、人生からおりたかったリンカちゃんのように、男たちを殺し尽くせばよかったと思うユリアちゃんのように、必然的な流れで彼女たちは風俗嬢になっている。その流れ自体が不自然である。その辺りは私個人の感想なのでご了承ください。

人生における本質を、「役割と性」という二つの観点から描いた謎々的大作である。
読もう!そして感情的になろう!
以上です。

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