ろくでなし守銭奴、努力する?


 『金なんざ大し・・・・・・て意味の無い・・・・・・ものだ・・・。』

 信じられない程無知で阿呆で間抜けで馬鹿で、そして素晴らしい言葉だ。

 金は物を買える。腹一杯食って食って食って食って飲んで毎日吐くまで食べて酒を溺れ死ぬまで呑んで倒れる事が出来るがそれだけじゃない。

 時間を買える、法律を変えるし買える、人の心と身体だって買えるし変える。意味なんて幾らでも見い出せる素晴らしいものだ。

 だから、意味がないと思うのならば俺が貰おう。幾らでもだ。



 酒の微睡まどろみから起き上がって声をかけた二人。全身が熱く、頭がフラフラして視界が歪み揺れる。それでも、金の為なら幾らでも動ける。

 男と女の2人は急に起き上がった俺を見て不信感を露にしていた。

 だが話をして、直ぐに俺の熱意を理解し、『それならば』ということになった。

 仕事の内容は奇妙で、スバテラ村の何処か、おそらく地下にあるだろう、『とあるもの』を取ってきて欲しい。というものだった。

 それが何かと訊いたのだが、具体的な形が解らないと言い、探すのも仕事だと言われた。

 面倒臭い仕事だ。正直やりたくない。だが破格の報酬の為にたった一度だけ、たった一度だけ我慢すれば、そうすれば、うまくいく。

 その為に、ミリー=ドゥムシンという名前を忘れ、植物学者のウルス=グレイナルという名前を名乗り、それらしい・・・・・口調とそれらしい・・・・・恰好をして、傍からはこの辺の木を調べに来た植物学者様にしか見えない様に仕上げた。

 最初に植物学者の権威だと言ったのに廃墟に住む様に言われた。が、文句一つ言わなかった。

 地下にあるというからその辺に入り口が無いか探した。それでも見つからなくて一日中その辺を歩き回って足が痛くなった。

 見付からないから薄気味悪い曰く付きの森に入って探し回った。そうしたらその辺の藪で切り傷だらけになったし虫に刺されたし口の中に土が入ったしエライ目に遭った。

 それでも見付からなかったから村のガキを唆して案内させる事にしたが、村がクソならコイツらもコイツらでクソだった。

 うんざりする程如何に自分達が他の連中より頭が良くて優れていて村の為になるかを熱弁されて、それを聞かされて阿呆みたいな誉め言葉で太鼓持ちをする羽目になった。それで役に立つなら鳥肌が立つ様な自慢話を聞かされた意味があった。が、無かった。

 最終的にあちこち這いずり回ってやっと見付けたのが地下の洞窟に通じる裂け目だった。

 結局。ここに来るまで俺は散々な目にあって散々な努力をする事になった。

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