危ない橋は三人で
「私も行くとしよう。
オーイ、君は留守番しておいてくれ。」
「はーい。じゃ、家で適当に寛いでるね。」
シェリー君の発言を聞いた自称そこそこ天才は懐を探ったりそこから飛び出した部品を組み立てたりと忙しくし始めた。
そして、孫娘も孫娘で待っていましたとばかりに家にふらふらと向かっていった。
「いえ、私1人でも何とかなりますから……」
一瞬、本人に気付かれない様に孫娘の背中に視線をやり、意思を伝える。
自分達2人がこの先へ行く事になれば、孫は1人で留守番することになる。
現在、あの家がこの辺りで防衛性能的にも隠密性能的にも最も安全な場所であることは明白過ぎる程明らか。しかし、自動運転とはいえ一度シェリー君に外側の迷彩装甲を剥がされているのも事実。
孫娘はこの中で最も荒事やこの手のロクでもない事態から無縁な生活をしてきた。本来は守られる側で、万が一の際に誰も孫娘を守る事は出来ない。
何より、十全にあの家を
向こうからは知る由もないが、シェリー君には私が付いている。何より、痕跡を見る限り自称植物学者はこの先を間違いなく幾度も無事に出入りしている。
本来ならば戦力を集結させる程身構える様なことは現状無いと見るべきだ。
「君は確かに聡い。賢く思慮深い。
私と君という戦力を不確定要素満載の危険地帯に放り込むことも、この自称そこそこ天才と我が家を切り離すことも悪手としては十分過ぎる程に悪手だ。
やるならば君が行き、私が家で待つ。オーイは当然私と一緒に留守番。
それが最適だ。」
「であれば……」
シェリー君が口を開こうとして制止される。
「だが、モリアーティー嬢、君は重大な思い違いを2つしている。」
それを聞いてシェリー君の顔から余裕が失われていく。
頭の中で組み立てていた式の何処に間違いがあったのかと思考を巡らせ、それに対応する様に見えない式を追いかける視線も動いていく。
自分の数式の不備を探すものの、シェリー君には決して見つからない。それはそうだろうさ、それは合理的な観点から見ればあまりにも無駄の多い解答なのだから。
「オーイ、あの子はあの子なりに考えているし、覚悟もしているんだ。
我々部外者がこの村の異常に向かっている中で自分だけが貢献していないと思っている。」
「そんなこと!」
「『そんな事無い。彼女は彼女にしか出来ない仕事をこなしている。』と言いたいのだろうが、それは我々の考える事だ。
貢献は出来ずともせめて足手纏いになりたくない。それがオーイなりの考えだ。危ない橋を渡るのは君だけではない事を忘れないで欲しい。
勿論、この自称そこそこ天才はそれを見越し、応え、あの家の権限をある程度調整してオーイでも扱える様にしてある。心配は無用だ。
少なくとも少女に装甲を破壊された以前よりは手強くなっている。あまり私と彼女を侮ってくれるなよ?」
自称そこそこ天才にウインクされてシェリー君は何も言えなくなった。
「ちなみに、二つ目の思い違いは何でしょうか?考えてみましたが、未だに答えが解りません。」
それに対して自称そこそこ天才は楽しそうに笑った。
「この自称そこそこ天才がこの先に何があるか気になったから私は行く。
こんな面白そうな事、放っておく訳がない。」
シェリー君は当然目を丸くした。
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