四つん這い入国のワンダーランド
『もしかしたら○○かもしれない』の真偽を確認するにはどうすれば良いか?
実験あるいは実践して確かめるのが一番だ。
幸いな事に、今回の件に関しては実践が容易だった。
魔道具のセンサーの反応ログが残っていたので、急に現れた地点を洗い出してその周辺を調べれば良い。
人間1人が出入り可能な大きさの入口を屋外に作る以上、『在る』という前提で捜索されると隠し通すのは中々に難易度が高くなる。
無論、不可能では無いがね。
今回に関してはある程度場所の予測が出来ていたから呆気無くそれは見付かった。
シェリー君と孫娘があの自称植物学者と遭遇した茂みの中、本来ならば人の行き来が無いその場所で、明らかに一度や二度ではなく人が行き来した形跡が残る場所があった。
付近には地下深くに刺さる様に大岩が埋まり、それが地上から地下へ、丁度スロープが出来る様に割れて、人一人が四つん這いになれば辛うじて入れる黒い口を開いて我々を待ち構えていた。
断面を見て元々は大きな一つの岩だった事が解った。
「矢張り私もまだまだ研鑽が足りなかったか。
ドリルが砕けた段階で調査を放棄せずにリソースを使い尽くしてでもやっておくべきだったか……」
近くに光学迷彩を起動した状態の家をスタンバイさせ、地面に出来た裂け目を見てその場で地面に崩れ落ちた。
「わー、すごい。
私この村に結構住んでるけど、全ッ然気付かなかった、知らなかった、ゴメン。」
孫娘もシェリー君に頭を下げる。
「いえ、この岩は比較的最近割れたものかと思われます。それが証拠に断面が風化していません。
地殻変動やその他自然現象が重なって裂け、本来岩盤によって隔絶されていた空間が最近やっと見える様になったと見る方が自然でしょう。」
岩の裂け目付近の地面を跪きながら何かを探す様に見回し、かと思えば裂け目自体に触れてみて、そして時に指先で弾く様に叩き、火の魔法で真っ黒で沈黙を貫く口の中を照らして、思案し、周辺を警戒しながら観察する。
「私はてっきり、地殻変動の類で出来たクレバスの様なものかと思っていたのですが、予測が外れました。
ここまで大きいものとは……」
入口から続くスロープは狭く、当然中に明かりはない。
先程シェリー君が魔法で中を照らそうとしたが、斜面が続いてここから見えるのは割れた大岩の天井部分のみ。しかも先程より入口から空気が流れる音が聞こえてくる。
到底その辺の子どもの見つけた秘密基地や子ども心を長年捨てずに持ち続けて大人の力で作り上げた秘密基地の規模は超えている。
「……入ってみましょう。」
周囲を観察しながら思考していたシェリー君が決心する様に呟いた。
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