会議お開き。そして帰宅。
スバテラ村事件解決及び復興作戦会議の後の事だ。
孫娘をこのまま『家』に滞在させる事も一度は検討されたが、村長に話を通す事や他の村人の目も考えて、村との連絡役として当分の間は自宅からここまで通う形となった。
「えー、私もこの家の快適空間で寝たい。眠る直前に熱々のココアを入れて貰えるってサイコーじゃん。ふかふかベッドで寝たいじゃん。朝食まで付くじゃん。」
本人はぶーぶー文句を言っていたがね。
「私の渾身の発明をココアと朝食付きのベッドにしないで貰おうか?
私の家はホテルじゃないんだ、ホテルじゃ。
ロクな家が用意されていない、周りは敵だらけ、ここで作業を行う事を前提としている。モリアーティー嬢は必要に迫られてここに居る訳だ。
対して君は村長の家に住んでいて、周囲からの信頼を得ている。ここに居る必要性があまり無い。
更に言えば我々のあれこれをする上で君が連絡係になってくれないと我々部外者にはどうにも出来ない。
その為にもあの村に一人、村長に連絡を密に取れる人間は必要だ。という事でもう遅いから送り届ける。だから帰れ。
あぁ、あとこれは明日ここに来る時に押すといい。そしたら迎えに行く。」
「わー、ジテンの私に対する態度がすっごい雑。」
「当たり前だ。私の君への好感度はそもそも人を裏切った所から始まっている。
面倒臭がりでやる気の無い小娘というマイナススタートだ。」
「モリーは?」
「将来が楽しみな才女だな。
この自称そこそこ天才の作り上げた家の光学迷彩外層を引っ
発想の自由さもそうだが、自分の能力を最大限引き出す様にその自由さを合理的に組み立てている。この思考方法は役に立ち、化けるだろうな。あらゆる点で。」
「へー、超推すね。私とは大違い。私もモリーへの評価は同じだけど。」
「当たり前だ。
そう、
発想の自由さと自分の能力を最大限に引き出す能力は彼女に元々備わっていたものかもしれない。
だが、それらを扱う様と手際、合理性は明らかに別の
あの刺激に狂った老医師に対する態度。一連の動きは老医師だけでなく自分に敵対した若者さえ思い遣る気持ちがある必死で真っすぐな動きだった。
しかし、最後。村人達と話すあの時の動きは違っていた。
能力を合理的に一つの物事に集約させた者の動き。十把一絡げの凡夫が自他の全てを投げ打った時の狂行とはまた違う、才覚ある者が『必要だから』と手段として集約させた、人を傷付ける事さえもただの過程だと割り切った、あの動きだった。
「じゃぁ私は帰るけど、モリーの事を宜しくね。」
思考に集結させていた頭脳が外界へと引っ張られた。
「あぁ、良いだろう。
では、これを渡しておくから使う様に……」
そう言ってスイッチを手渡す。その手をオーイが引いて、私の耳元に声を落として囁いた。
「本当に、モリーの事をお願い。
私は助けて貰ってるから止めてなんて言えないし言っても多分止まらない。
だから手伝いたいけど、私じゃ出来る事なんて大して無い。だから、自称そこそこ天才、頼む。」
視線を横に向けると、そこには呑気な村娘の顔ではなく、友を思う真剣な顔だった。
「『この自称そこそこ天才を侮るな。』それで良いか?」
心の底から笑って見せる。孫娘の顔は晴れていった。
スイッチを手の中で転がしながら扉へ小走りで向かっていった
「じゃ明日の朝、甘い熱々のココアをお願いね。二人共、じゃーね。」
お気楽な顔をして、自宅へと帰っていった。
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