前座終了のお知らせ
孫娘とシェリー君が向かう先は仮家……ではなく森の方。
元々村翁が嵌める事前提で用意した防犯が『
あの場に居た連中の中に最早逆らえる者は居ない。が、若者連中が不躾にも突撃してくるリスクはあり、何よりあばら屋よりも自称そこそこ天才の家の方がずっといい。
シェリー君の体の主導権は今、完全に私が握っている。
でなければ骨と関節を破壊しながら毒爺を射出するなんて私の行動を止めない訳がない。
今、私が主導権を返せば孫娘の肩を借りて立つ事も出来ずにその場に崩れ落ちる。
休むなら、より安全で快適でより休める場所へ。
本人に意識があるならば全力で抵抗する事が確定しているが、今回は良くも悪くも満身創痍であった為、呆気無かった。
嗚呼、非常に動きが鈍い。精神的な疲労抜きにしても最悪なコンディションだ。
「モリー、本当、有難う……ね。」
力の入らないシェリー君の体に肩を貸しながら孫娘は少し暗い顔で歩く。
拙いながらも周囲を見回し、気を配って向かっていく。
自称そこそこ天才の家に行くのなら情報を漏らすのは得策ではない。これ以降起きる事柄に対処する上でこれ以上情報の開示をする必要性は無いからだ。
「いえ、これからやるべき事が、未だ、沢山あります。
問題は、未だ、解決していません。どころか、始まってすらいない……」
「えっ、それってどういう……?」
周囲に人が居ない事は確認している。とはいえこの場で口にすべきではないし、シェリー君は今意識が無い。これは私のすべき事ではない。話すのは後にしておこう。
「それはまた、後程……」
「あっ、ゴメン!」
動かせる事と疲労が有る事は別問題。今はこれ以上の消耗を防いで大人しく休ませることだ。
ここまでは余興、あるいは前座、はたまた前哨戦。これから今までの比ではない過酷へと身を投じる事になるのだから。
二人の少女は薄く霧がかかる森へと足を踏み込み、周囲に人が居ない事を確認して……消えた。
「おぉ、二人とも。こちらからも見ていたよ、特に私の発明品が活躍した辺りは。
ただ少しばかり操作から動くまでのラグが気になったな。今回は違和感でどうも済ませて貰ったようだが、あのガキ連中の頭が砕かれた辺りで老人に疑いを抱かせてしまった様だ。あれがもし現役の騎士であったらと考えると悔やむばかりだ。
君のバトルスタイルが思った以上に魔法戦や肉弾戦よりも頭脳戦主体だったから、反応速度向上と低燃費化という二点で改良を更に施したいのだが、どうだろう?」
透明化した二人が向かった先には自称そこそこ天才の家。家の扉が閉まると同時に男は上機嫌に改良案を提示してきた。
「お願いしても、よろしいですか?」
重い指先を使って懐を探った。
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