1~4と村の中で


 「朝からあちこち探し回ってるが居ねぇ!家探ししたってのに荷物一つ無ぇ!森には相変わらず霧が出ててまともに探せねぇ!何だってんだクソが!」

 『荒み切った若者』という表現がピッタリな4人組。しかし、当の本人達はそれに気付いていない。どころか、自分たちは正義の徒だと信じて疑わずに居る。それが怖い。

 「落ち着きなよウノ。怒って騒いでも逃げられるだけさ。冷静に、見敵必殺って言うでしょ?」

 全身の関節という関節を痛めつけられていた男を宥めている当の本人は、昨日冷静とは程遠い行いをしていた。しかし、その自覚は当然無い。

 「村中、探した。見付からない。多分、森。それか逃げた。」

 「ドーエル、流石に逃げたって事は無いんじゃない?あーいうタイプ・・・・・・・って逃げないでしょ?だったら、森かな?」

 「ったくよぉ!俺達が必死に真面目に生きてるってのに、アイツが来てから災難続きだ!

 何だってんだよあのクソ疫病神ガぁ!ッ痛ェェエエエエ!」

 叫べば当然痛みは酷くなる。だというのに、ウノという若者は一切反省も学習もしない。

 それだけなら良いのだが、その痛みで怒り、それを周りに撒き散らすから性質タチが悪い。

 「そういえば皆、オーイは見た?僕は朝から全然見てないんだけど?」

 「ア?見てねぇよ。」

 「無い。」

 「……(首を横に振る)」

 「うーん、昨日オーイは僕らがアイツの家に行こうとした時に皆を押し付けてきた。

 気のせいかなとも思ったんだけど、やっぱり向こう側・・・・だよね。

 んー……」

 そう言ってクアットはその場で目を瞑り、考え込む。

 「おいクアットォ!何ボケっとしてるんだ!森だろ?森なんだろ?ならとっとと行って捕まえてタコ殴りだァ!」

 「ウノ、ちょっと静かに。あーいう自分がちょっと出来るからって調子に乗るタイプってそこそこ考えは回るんだよねぇ……

 トーレー、ちょっと村長の家にお見舞い・・・・に行ってきてよ。

 ついでに困ってたら手伝いもしてあげて。で、もしオーイが居たら僕らの所に連れて来て。」

 「……(頭をゆっくり縦に振る)」

 「ォーイ!何が『村長のお見舞いに行ってきて』だぁーよ!

 油売ってる間にヤツを血祭りにする方法をぉ……」

 ウノは言葉を最後まで言い切らなかった。理由はクアットが沈黙のまま遮ったからだ。とても自然な笑みが表情筋一つ動かずにクアットの顔に貼り付いていたからだ。それはクアットの怒りや不快感の感情の証だとウノは知っていたからだ。

 「だから今、それを考えて実行中だ。

 オーイがグルだとしたら、朝から僕達が見かけていない理由はただ一つ。僕らが見回る前にアイツの隠れ家に行って未だ帰っていないから。

 じゃぁ、オーイの家に誰かが張り付いて、帰ってきたらそのままこっちに連行させて吐かせれば良い。

 村長を助けたのは誰なのか、それくらいオーイにも解る筈だ。」

 非常に自然な笑み。それは何度見ても、どんな角度から見ても、いつも同じ、お面の様な非常に自然な、異常に不自然な笑みだった。

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