自称そこそこ天才さん家の今日のご飯
25分の間、私と自称そこそこ天才は当然外に居る。
最早説明不要だが
故に、ジェームズモリアーティー とシェリー=モリアーティー嬢を除き、ここには自称そこそこ天才一人しか居ない状況と映る。
もし、この自称そこそこ天才が、目撃者が居ない事を幸いにと下手な小細工に手を染めたのであれば、その手は血に染まる。当然自己血で、だ。
「さてと……乾くまでに25分と嘘を吐いた。時間はそれだけ、何かを察して早めに出て来たとしても20分は猶予がある。」
先程までの自分の発明品を見せたくて仕方のない発明家の姿は冬の吐息の様に消えてなくなった。
そして出て来たのは目の前の何かを真剣に目で追う姿。そこに何かが居る訳ではない。が、発明家には見えている。
家の中を歩き回りながら、表情筋は動かず、声帯も動かさず、しかし目と手足だけが一つの目的を果たす為に動き続ける。
目は線分を描く様に横へ動き、一定の動きを終えると逆方向へ素早く目が動き、先程動き始めた場所より僅かに下からまた視線で線分を描く。
時にその線分は今描いた線分を吟味し、数本前の線分をじっくりと
「見えない数式、あるいは文章だな。」
思考し続けると大量の情報が思考力を圧し潰していく。対応するにはそれらを外部に入力してしまう事が最も簡単。しかし、大量の情報を数式や文章に出力すると、両手が塞がれて煩わしい、作業の邪魔になる。
見えない紙、減らない紙、手を使わず、インクも減らない目の前の空中に計算式や文を走らせれば両手は動かせる。大半の場合視覚無しで行動することは無いので視覚情報を少し弄るだけでいい。
そして、頭の中であれやこれやと考える以上に目の前に広げれば一覧性を高められる。
「食事の準備だ。
材料のキノコを2種類二人前分用意してくれ。あとパスタの製造から茹で迄やっておいて。」
誰も居ない虚空に向けてそう言った途端、二種類の食用キノコ、そして包丁とまな板、更には蛇口と流しが目の前に床から机と共にせり上がる様に現れる。
おまけにその隣には沸騰したお湯とその中で踊るパスタ。
「女性、客人だ。脅威度0だから
布団は乾燥して。湿度温度も適正範囲に。床暖房起動。食事後少しだけ会話をする予定だが、十分な休養休息が必要だ。それまでにゲストルームを造っておいて。権限は家を
手洗いを済ませ、天井から小さなアームが生えて自称そこそこ天才にマスクを装着。慣れた手付きでキノコをバラバラにしていく。
「良さげな食材があるならそれも用意して欲しい。」
その言葉に呼応して塩漬け肉と野菜が追加された。
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