悪い事は団体でやって来る6
「解毒 完了!」
それが終わったのは今まさに鉈が頭に喰らい付こうとしているその瞬間だった。
既にそれは振り下ろされている。対してシェリー君は今この瞬間に全身全霊を使った解毒を終えたばかり。両手は村翁へ向き、鉈に対して背を向けている状態。迎撃準備は出来ていない。
紙一重。まさにその言葉が相応しい。
だが、紙一重あれば攻撃を防ぐ事が出来る魔道具を持っている事を忘れていないかね?
『H.T.』
H.T.が懐から飛び出し、シェリー君と鉈の間に強制的に割り込む。
布そのままでは鉈の切断は防げても衝撃自体は殺せない。四隅がベッド机、診療所の梁に結び付き、布自体の硬度を上げ、衝撃を殺す。
金属同士がぶつかる音が診療所内に響き、火花が散る。
「ぐ……!」
「おっと。」
シェリー君が受け身を取る。紙一重で防いだとはいえ、完全封殺とは至らなかった。
僅かな衝撃を、村翁に覆い被さらない様に、万が一反れたとしても、他の者に当たらない様に、流して受ける。
「さぁ、村長を保護するんだ!」
あのまま頭をカチ割っていたら最悪保護する対象に当たっていたかもしれないというのにぬけぬけとそんな事を口にした。
………そもそも診療所の中に不衛生な凶器を持ち込んで振り回すな。感染症等のリスクが増える。
「恐らくぅうう!毒を盛られているだぁあああろぉおおおおおおお!
さぁ俺達で治すんだぁあああああ!」
汚物まみれで地を這うヤツが腕を上げて必死に抵抗しようとする。
ちなみに、シェリー君のやっていた事は始めから終わりまで、嫁をいびる姑の様な、典型的な重箱の隅を突きまわして潰すつもりでちゃあんと目線を向けていた。
結論、対処に問題は無かった。少なくともこの後で絶食で放置したり毒を盛ったりナイフで血管を切り刻まない限り、あとは寿命が尽きて老衰で召されない限り死ぬ事はない。合格だ。
ま、それで死んだとしたら、その時はその時だ。知った事ではない。
ただ、このまま快方に向かったら『自分達が後でやった治療が功を奏した』と言う。死んだらその時は『全身全霊を尽くしましたが
安い、あまりに安い。茶番が詰まらな過ぎる。シェリー君の前にやってくるなら知能が無くとも圧倒的破壊力で蹂躙出来る様に振舞うか、謀略奸計邪知の巣の中心で獲物を待っているか、はたまた純粋な狂気の塊を心の内に隠し通す位はやって欲しい。いや、本当に。
敵対するのなら徹底して見せて経験になって欲しいものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます