悪い事は団体でやって来る3


 重症も重症。瀕死の村翁の対処に付きっきりで向かっている時の事だ。

 老医はハッスルして中毒症状へ次々と狂乱状態を維持しながら対処し続けている。シェリー君は村翁を救う為に見えない死神と一対一の殴り合い。孫娘はショックで未だ機能停止中。

 あとは死にかけているか苦しんでいるか、それだけの連中……。

 3人で辛うじて回していた状態。それが今、1人戦力外、1人つきっきり。

 多忙を極めている危機的状況下。猫の手も借りたいというのに……

 「グァアアアアアアア!やられたぁ!痛い痛い痛い痛い痛いぃぃいいいいいいいいいいいい!」

 担ぎ込まれたのは今朝私に色々と外された例の若者。ただでさえ騒々しい診療所にわざとらしい大声で叫びながら乗り込んできた。

 付き添い人が何人も居るが、声を張って叫ぶ程に元気な訳だ……。まぁ当然中毒で苦しんでいる訳がない。

 当人はニヤニヤとシェリー君を見ている上、付き添いは例の連中。しかも、それぞれ先程まで持っていなかった凶器・・を携えている。

 ただでさえ面倒だというのに、ただでさえ忙しいというのに、シェリー君の利になるとは言い難く、村の利になる行動だというのに、損得の勘定は出来ないのかね?

 「毒キノコに中って体中が痛いぃ!頭痛がするぅ!吐き気もするしぃ!眩暈と悪寒と動悸と息切れと…アトナンテイッタ……そうだ!気持ち悪い!死にそうだぁあああああああ!」

 吐き気と気持ちの悪さは同様の症状とまとめてもよくないかね?

 体中が痛いのは今朝私の怒りを買ったからではないかね?

 あと、それだけの症状で叫べるのは一体どういう状況かね?

 「体中の痛みはもうあるとして、頭痛、眩暈は…殴ればいい。吐き気は…腹部への打撃。息切れは首を締めあげればいい。悪寒は……適当な血管を切断すれば問題ないな。」

 あぁちなみに、動悸に関しては心配する必要はない。

 今言った行動を一瞬で終わらせずにゆっくりと、自分がどういう目に遭うのかを一つずつ認識出来るようにすれば、動悸の100や200くらい、造作もなく起こせる。

 「教、じゅ、止めて下さい!」

 村翁への対応に全身全霊四苦八苦だったシェリー君が私の思考に口を挟んだ。

 「冗談だよ冗談。ただしふざけた真似をこれ以上した場合はその限りではない。」

 有益な経験ならば歓迎するところだが、中途半端な・・・・・経験・・を役立てるよりも徹底した・・・・経験・・を得た方がより合理的だ。

 「なんて酷い気分だ!なんでこんな気分になるんだ!今日食べたのはキノコのソテーだってのに!

 あぁ、そういえば見たな!今日そこに居るクソ女が村のキノコ置き場にコソコソ忍び込んでいったのを!

 なんでかなと思っていたが、今ようやく謎が解けた!

 コイツが俺達に毒を盛った犯人だぁぁああああああああああああ!」

 付き添い連中が嬉々とした表情を浮かべる。

 こいつら、やったな。


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