ガラリと変わる雰囲気
村翁の苦悩など知った事ではない。外に出て行った二人はと言えば………
「驚かせてしまい申し訳ありませんでした。」
晴れやかな顔。表情は動き、言葉にも抑揚がある。
先程とは完全なる別人。あまりに落差が有り過ぎるせいで予め説明していたにも関わらず、孫娘の表情が引き攣っている。
「あ、うーん、えっと、モリー。あれって、演技、で、いいんだよね?」
「えぇ、少しだけ、フォルダさんには思うところはありましたが。かと言って事件を起こそうという気は一切ありませんし、もし何かあったとしたら、その時は原因がなんであろうと診療所に駆けていくつもりですよ。」
「うん、少し、ウン、すこし……ね。」
表情が更に引き攣った。『思うところが少しだけなんだ。あれだけされてそこスルーなんだ……』と黙りつつ表現している。
ちなみにそれをスルーしたシェリー君は次のことを考えていた。
「村の方々からの印象は最悪のままでしょうが、これで少なくとも村長からの妨害は無くなるでしょう。その間に森の件を片付けましょう。
あぁ、そう言えば朝からの騒動でそれどころではありませんでしたが、ジーニアスさんに昏倒した方の状況を報告せねばなりませんね………あらら?」
口の中で呟く様に思考を巡らせていたのだが、足元が怪しくなり、倒れそうになって足を止める。
「ちょっ!モリー、如何したの⁉」
1.2m程後ろを歩いていた孫娘がシェリー君の異常を見て、先程とはまた違った強張った表情で駆けて来た。
「あははははは、情けないですね。朝食を食べるのを忘れていました。」
昨日は自称そこそこ天才の元で茶菓子を馳走になったが、夜は診療所で詰めていた。
そして今朝は早朝から面倒事に巻き込まれて日が高くなる今の今まで食事どころではなかった。
純粋に空腹が原因の低血糖。大事ではない様に感じられるが、シンプルに思考能力が低下しているのでこれが起点となって幾つもの事柄が崩壊していく可能性がある。
更に言えば昨夜は診療所での奉仕活動+証拠隠蔽を行い、今朝も早朝から叩き起こされて睡眠不足。
コンディション最悪。森に居る光学迷彩兵器が敵ではなく、こちらから呼び出しが出来る状態ではあるが、未知の要素が未だ複数ある。このまま急いで森に入るのは悪手も悪手だ。
「そう言えばそうだった!忘れてた!ごめんごめんごめん!本当にごめん!」
足のふらつきを抑えて再度歩み始めたが、いつも通りの歩みとは程遠い。
「いえ、私も保存食が無い訳ではなかったのに食べるのを忘れていただけです。ご心配無く。」
「ごめん、家まで送るから!その後直ぐにご飯持ってくるから!待ってて!」
この後、帰宅するまで問答無用で肩を貸して貰い、無事帰りましたとさ。
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