孫娘への推理は続く
孫娘は『動揺』という言葉を体現していた。
言い訳や誤魔化しが最早出来ない状態。力づくという方法も使えない。
観念した。
「ごめん……モリー。
正直に言うね。そう、モリーが今持っているのは毒キノコの粉末。
昨日勝手に家に入って毒キノコを置いたのは私。
そして昨日の中毒事件と今日のこの騒動。仕組んだ犯人は私で……」
「それは真実とは言い難いですね。
確かに、昨日の中毒事件、今日の騒動に関してオーイさんは深く関わっています。
昨日、中毒事件の物証となる毒キノコを仕込む為に侵入したのも間違いなくオーイさんです。
ですがオーイさんは実行犯であって仕組んだ犯人は別に居ますよね?」
「っ⁉」
驚愕の表情と息を呑んだ。図星だな。
「オーイさんが犯人だとしたら、あまりにおかしいのですよ。
そもそも、オーイさんが犯人だとしたら、何故扉の前にこの紙を置いたのでしょうか?
私はそもそもこれを置いていなかったので、紛失したと考え、慌てて自分で似た物を作って扉の下に仕掛けたというのであれば納得出来ます。
しかし、私が帰宅した時に、この紙は部屋の内側に既にありました。
勿論、オーイさんが侵入した後に他の誰かが侵入した可能性もありますが、昨日家の中を確認した時、無くなった物は無く、増えた物は毒キノコだけ。
侵入者はオーイさんだけと考えて良いでしょう。
つまり、オーイさんは扉の付近に紙を落とす意味を知っていながら敢えて扉の下ではなく扉を開いて丁度私が気付く様に置いたという事になります。
悪意ある犯人の行動として、これはあまりにも杜撰過ぎます。
何より、荷物の中身が荒らされて毒キノコが入れられていました。
鍵のかかっていない家。侵入者の痕跡があれば、荷物の確認はされる。一見して荷物が荒らされていたら如何に巧く隠してあったとしても見付けられますよ。
以上の事からだけで考えても、オーイさんが私を犯人にする気が合ったとは考え辛いです。
ただ、同時に今日の騒動でオーイさんは先陣を切って、先陣を切っている方々の誘導をしていました。」
『そ、そうだよ皆!
な、なんの根拠が有って……その、モリーを、なんで、疑ってるの⁉おかしいでしょ?』
『ナァニ言ってるんだオーイテメェ!
『言った』
孫娘は今日の騒動の発端となる情報をあらかじめ知っていたにも関わらずそれをわざわざ事情を知らない観衆の前で再度言って知らしめた。
奇妙、不自然、矛盾、奇手というより悪手。
陥れたいという意志とそれを阻止したいという意志が混在している。
まるで二人の人間の意志が混ざっているかの様に。
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