謝罪の応戦を終えて
謝罪の応戦を終えて、互いに席へと座り、ぬるい紅茶を飲んで落ち着いたところ、湯気立つ紅茶が新たに注がれた。
とりあえずの謝罪は終了。本題へと近付く。
「しかし、よく昨日の件が私だとお解りになりましたね。聞く所によるとあの時、私がアームを壊している姿は見ていなかったという事になりますが……」
シェリー君の疑問に対して新たに出て来た茶菓子を食べながら男は答える。
「この家は僕としては中々な力作。ちょっとやそっとの力で自切機能は働かないし、迎撃レベルが最大になる事も無い。昨日切り離した部分を回収して修理する時に破壊個所を見たんだけど、相当な力が加わっていた。昨日この家とやりあったのはどんな相手か?って考えたよ。
で、少なくとも見えない相手に対して冷静に対応出来る判断力とこれを相手に善戦出来る腕っぷしの強さの持ち主って所に行きついた。
最初は頭の切れるマッチョかはたまた狡猾な獣か何かだと思っていた。でも、今日君が来た。
こんなところに丸腰で来る人間は滅多に居ない。居たとしても酸欠であっという間に昏倒して一巻の終わりだ。それが無いって事は、君はガスに気付いて対応出来るだけの能力を持っているという事。
そうして注目したのは君のその纏っていた布だ。」
既にシェリー君は武装解除し、H.T.は膝の上に小さく畳まれ鎮座している。
「それは多分魔道具。見たところ布の繊維に魔法的な細工をし、魔力に呼応して『柔』と『剛』の性質を生み出す代物だろう。布の光沢やしなやかさを見る限り、布はかなり頑丈で高品質。身に纏う所を見る限り鎧の代わりになる位の強度は期待出来るのだろう。
そんな代物を一枚の布にして今、持っている。画期的な発明で高性能な魔道具だと間違い無く私は思う。そして、この自称そこそこの天才の僕はそんな発明を見た事が無い。操作の難易度は簡単では無いだろうし、あの使いこなし方からして、多分自作したものだろう。
そうして、行き着いた考えとしては、それを十分に使いこなせたら…具体的には布を発条代わりにして弾性を高めれば『家』に対して攻撃が出来て、防御も出来そうだ。
これなら僕のイメージする頭の切れる大男や狡猾な獣と同じ事が出来るんじゃないか?って事になったんだ。」
「成程。そういう事でしたか。」
憶測が多いが、その憶測の大半が正解に近い。
自称そこそこの天才と言っているが、あのお嬢様軍団に比べれば謙虚の塊と言えよう。否、比べる事自体が礼を欠いた考え方と言えるか。
「こちらからも質問がしたいんだ。
君はここに来た時、わざわざこちらが気付くような事をした。昨日襲った相手だと解っていた筈なのに敢えて気付かれる様な真似をした。最悪攻撃される事を考えていなかった?それは無いだろう。
では何故?少なくとも『家』のセンサーは君を捉えていなかった。強襲する事も出来たと思うんだけど?」
少なくとも、自分が死にかける程度に襲った未知の相手に対してやる事では確かにない。
昨日のシェリー君にはそれをする事は確実に出来なかっただろう。だが今日のシェリー君は違った。
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