厄介な不可視攻撃。ただし対応不可ではない

 先程まで見えていなかった何か。砕けた音と共にその一部が砕け落ちるのが見えた・・・

 金属製の巨大アーム。それが何も無かった場所からいきなり現れて指先から落ちて鈍い音と振動を響かせながら地面にめり込む。

 「どうやら生き物では無さそうですね。そして見えないのは素材由来ではなく魔法由来。

 そして……少し、困りましたね………」

 シェリー君が落ちたアームを見て少し苦い表情を見せる。

 目の前の地面に落ちているのは金属製の円柱の先に金属の指が三本生えた代物。

 円柱の中間部分が歪んでいるのはシェリー君の一撃によるもの。それは問題ない。

 が、地面に落ちた理由はシェリー君の一撃によるものではない。腕の真ん中。殴られた部分は破壊の痕跡が有るにも関わらず、根元部分に破壊の痕跡が無い。『壊れた』というよりどちらかと言えば壊れた部分を交換するためにパーツごと『外した』というのが近い。

 そう、これは壊れたのではなく衝撃で抜け落ちるように予め出来ていた。

 そう、さきの一撃は痛打となっていない。

 更にもう一つ。苦い表情の理由がある。

 抜け落ちた腕は地面にめり込むほどの重量。そして先程も言ったが移動時に残る筈の足跡や痕跡が無い。

 金属アームの持ち主が獣の様に足跡や痕跡を消すという事を徹底していたなら話は別だ。まぁ、そもそも今相手をしている奴が地面に接触しているのなら今痕跡が残っているはずなのだが……ね。

 腕の重量から予測される超重量の本体は何処にある?




 頭上で空を切る音がした。

 「上⁉」

 頭上からの重量攻撃に対して魔法付与H.術式靭布T.は無力とまではいかないが今回の重量では対応出来ない。が、周囲が無音であった事が首の皮一枚を繋げた。

 腕を保護していたH.T.を解除、近くの木に巻き付けて飛ぶ。引っ張られるシェリー君の足先に何かが掠り、先程までシェリー君が立っていた場所がクレーターの様に抉れる、否潰れた。

 本体は頭上に居た。

 足跡は相変わらず無く、しかし見えない何かが持ち上がる音が少しだけ聞こえる。

 「怪物……ではなかったが、この森にはロクでもないものが居る事は解った。中々な収穫だね。」

 それに対してシェリー君は答えない。

 体を覆っていたH.T.の一部を解き、自身の周囲に漂う様に展開して身構えている。

 そして、不自然に背中側の布端が揺れ動く。察知したシェリー君がその場から飛び退くと近くにあった木に拳程の風穴が空いた。

 「困りましたね。見えないというのは……ッ!」

 布端が揺らぎ、辛うじて反応したシェリー君は回避して森の方へと回避していった。


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