予想外?あるいは意のまま?


 「今のところは子ども達と作戦会議をして情報収集を、その間に次の手段を考えておきます。

 今のところ私は相手の情報を一切と言って良い程には知りません。

 先ずは情報収集をして最低限相手の数と詳細情報を知らないと……」

 シェリー君はそう言って沈思黙考。

 孫娘側は訝しんだ表情をして、瞬きをしながら思案顔のシェリー君へと疑問を投げ掛ける。

 「えーっと、相手って?」

 言っている事の意味が解らないから説明して欲しいと目が訴える。

 「相手……仮称『森の怪物』ですね。」

 「カショー?モリノ?カイブツ?」

 瞬きが止んで、鳩が豆鉄砲喰らった顔をした。

 「あれ?もしかして本当にこの森に入る気?

 本当に突っ込む気?本当に本気?」

 喉に詰まった豆鉄砲を飲み込んだのか、咳き込むように早口で喋り始めた。

 「その心算つもりです。

 最低でも森の怪物の正体を暴いて、共存の道を模索するかそれが難しい場合は別の道を探して怪物の風評被害を是正したいと思っています。」

 「あ、あー……本気だ。目が本気だ。」

 表情筋が固い。笑みを作ろうとしているが筋肉が引き攣って絶妙微妙な表情になっている。

 「それは勿論です。

 現状、子ども達には遊び場も遊ぶ相手も居ません。

 森の不確定要素を減らし、せめて彼らの遊び場だけでも取り戻したいと思っています。」

 あぁ、ちなみに大嘘だ。

 シェリー君はこの森に居るのが人であろうが獣であろうが何であろうが『怪物』という概念を叩き潰す心算でいる。

 三か月で風評原因を潰す気だ。

 よくもまぁ初対面にもかかわらず礼を欠いた連中も居る赤の他人連中の為にやれるものだ。

 小さな閉鎖社会の記録や記憶に残るような事をやると期待している訳では……かの淑女なので無論あるが、一授業の一環に注ぐ熱意としては中々に目を見張る。


 まぁ、それは兎も角……だ。

 既に両人とも簡素な昼食を終えて大分経つ。にもかかわらず、仮家の中は午前中よりも静かなままだ。

 家で食べている?食べるのが遅い?家が遠い?

 あの好奇心と興奮度合いでは昼食を持ってきて食べかねないとは考えないかね?

 昼食を何時もより少なくして、頬張って水で流し込もうとしないかね?

 この村を端から端まで往復し、昼食を食べ、1時間15分38秒も掛かるかね?


 「遅いな……」

 「何かあったのでしょうか?それとも家の事情でここに来れないのでしょうか?」

 孫娘は首を傾げ、シェリー君は胸を押さえて不安な顔をしている。


 「少し、見に行きます。」

 「じゃぁ私も行く。」

 扉の下に例の紙を噛ませ、二人は仮家を離れた。




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