校外イベント説明会2
「後ほど各々の行くべき場所を指定します。そちらに向かい到着し次第、地域の方と意見交流等を行い、貴女達が今まで培ってきた力を存分に使って地域の方々への力になり、それを証明しなさい。
以上です。質問があれば挙手を。」
異常なまでに端的に、あっという間に終わってしまった説明会。
これはまぁ、わざとだな。肝心要の情報だけを抜いて説明している。
ここで説明を流して聞いて、それに気付かないものはそのまま切られる。
この後質問をして敢えて詳細に答え、『質疑応答』という印象に残る演出をした上で、それでも聞いていなければもうその段階で詰み。落第と判断される。
この場で既にここに居る人間はふるいにかけられている。
相も変わらず興味の無い連中と茫然自失状態の人間は動く気配が無い。そもそも聞いていないし気付いていない。
そして、ある程度聞いている人間は牽制のしあい。誰が早く動くか、敢えて隠された肝心な情報に手を突っ込んで誰が火傷するかを見ている。
かの淑女相手に衆人環視の中一対一で舌鋒合戦を繰り広げたいと思える度胸は無いらしい。
「質問が無ければ説明会は終了します。
後程行き先と場所の書かれた地図を渡すので自室にて自習を…」
淑女は辺りを見回し、牽制に気付き呆れながら終わらせようとして…
「あ、申し訳無いです。質問良(い)ですか?」
一人、挙手をした者が居た。
「何ですか、トランシア=バックドール?質問があるならば直ぐ済ませなさい。」
席を立って舌鋒を構えたのは猫背で小柄、ニヤニヤと露骨に作った笑顔を張り付けながら細めた目は決して笑ってない、どころか瞼の間から人に値札を付けているような印象を与えている小娘だった。
愛嬌のある人間を演じればまさにああなるという見本だろう。
実際淑女と対峙する際も飄々とした態度と表情は崩さず、下手に出る様に頭をペコペコ下げる様に立っていた。
「あ、名前覚えて貰てるみたいで、有難(う)御座います、じゃ幾つか。
先ず、一番大事な所なんですけど、そもそも『結果』って何です?
テストと違って得点無い。条件違う。〇×無しで一回限り。厳しないです?」
独特のイントネーションとやや大げさな身振り手振りを交えながら質問を投げかける。
バックドール家。北方の海沿いの痩せた領地を治めている貴族。
この学園の中では高い位とは言い難いが、『寒く海風に晒されている痩せた土地』という三重苦を背負いながらも貴族社会である程度高い地位を維持している。
その理由は簡単。バックドール領は農業こそ盛んではないが、肥えているからだ。
そう、バックドール家及びその領地では海に面している事を最大限利用して商業で栄えている。
バックドール家は『商人貴族』で名の通った家だった。
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