コズマ=ボンノーの伝説 9章

 「よぐも゛お゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」

 「なんなんだよぉ!」

 誘拐専門犯罪一家『ナッパーキッドの15人家族』:一家離散


 「ボンノー、ボンノー……あー、あの坊主か。」

 何年か前に元ウチのモン達が粗相をやった時、そこに居合わせた俺が〆ていた時に俺の拳を止めた奴が居た。

 「ここから先は我々がやります。そちら側の世界の落とし前の事は知ってます。そこの外道が何をしたかも知っています。殴りたい気持ちは分からない訳ではありません。

 しかし、警備官が見た以上、それを放置する訳にはいきません。

 警備の連中に任せるのは信用出来ないでしょう。ですが、に、俺達・・に、委ねて下さい。」

 あの男は俺が何処の誰かは分かっていなかった。やくざな男とだけ見えていた筈だ。

 そいつを相手に目を逸らさずに、侮蔑や軽蔑なんて無い真っ直ぐな目で『委ねて下さい』と言ってのけた。

 思わず〆てた奴を渡してた。

 「あぁ、あの警備官の事ですね。

 検挙率が頭一つ以上飛び抜けているのでウチでは要警戒リストに入れてますよ。」

 「…………………………………………………………………ボンノー、ボンノー、どこで……」

 「あーぁ、あのボウヤねぇ。何度か口説いたんだけど全っ然靡いてくれないのよ。

 奥さんと娘さんが超可愛いって絶対に揺らがないし逆に惚気て来るの。良いわよねぇ、一途で誠実。揺らがない男って良いわぁ。」

 三人とも奴のことを知っているらしい。


 「思い出した、ボンノー!

 少し前にどっかのイキった阿呆が警備官の嫁ぶっ殺そうとして、で、今日だか昨日だかしくじったって話聞いたぜ!」

 水晶の前の4人、言った張本人を含めて全員がその言葉に固まった。

 愛妻家が妻を傷付けられた。そして、ソイツが裏側の人間だと何処かで知って、ソイツを仕留める為に裏社会の人間を無差別に粛清している。

 飛躍している様に思えるが、ソイツが実行した時期と暴れた時期が余りにも一致している。

 「つまりは、だ。」

 「奥さんに危害を加えられ、頭に血が上った彼が犯人を捜しつつ組織を壊滅している。という訳ですね。」

 「まぁ、愛妻家。凄く気に入ったわ!」

 「………不味くねぇか?ソイツ、嫁にちょっかい出されてブチ切れてんだろ?

 犯人がどうにかなるまで暴れて潰しまくるって事にならねぇか?ちなみに、俺はソイツの居場所を知らん。」


 「…………………………まずくないかしら?」

 「…………………………大問題ですね。」

 「…………………………不味いな。」


 「野郎ども、全員で犯人を捜して捕らえろ!」

 「分かったわ。皆、頑張って捜して!」

 「総員に通達。全力で犯人の確保に向かって下さい。」

 最後に捜索を告げる声が聞こえて水晶から光と音が止んだ。



 「ボス、情報屋は押さえてあります。如何しましょう?」

 「流石だ。総動員で捜索してくれ。」

 一人の警備官の凶行が、この街の裏社会を団結させた。

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