コズマ=ボンノーの伝説 8章

 「このままいけば血の気の多い若い衆と小さい組織トコロの連中が痺れを切らして事を構える。それは時間の問題だ。

 そうすれば間違い無く向こう警備も黙ってる訳がない。間違いなく連中とこっち・・・、全員で殴り合いになる。」

 水晶に向かって口を開く。議論の相手はこの街の裏の顔役。口論は直ぐに止む。

 ここにいるのは組織4つの長。しかし、『単純に発言力がある四人』ではない。

 『この街の裏の全部』だ。チンケな破落戸から組織の長まで全てのこれからがここで決まると言って過言ではない。

 ここで一言『やる』と口にすれば、裏社会の四大組織が動く。そしてそれは波紋となって波乱となって波及して末端までもが武器を取る。

 俺達はどう足掻いてもどう全うを装っても、正義と秩序に唾を吐くロクでなし共。

 掟を、仁義を、義理を、契りを重んじても、所詮は爪弾き者が手前で手前を喰らわない様にするための首輪。

 その首輪は堅気の人間を守る事が出来るとは限らない。連中はそれを知っているから俺達を蛇蝎の如く嫌う。一挙手一投足に警戒する。

 だから、指の先、髪の先の動きでさえも全身の動きの予兆・・と捉えて捕らえる。

 俺達の動きはこの街の闇の全てと捉えられる。

 過去、ただ一つの組織が警備の連中と喧嘩しようとしただけで末端組織や穏健派までもが巻き込まれた総力戦になった事がある。


 『この街の裏の全部』は過言ではない。


 「既に組織が幾つも潰れてる。『ベルセルクカンパニー』を一人で潰したって情報が確かなら、構える段階でこっちはもう後手も後手、最悪詰みから始まる。」

 「そもそも身の振り方を考える前に、一体何処の誰がやってるのよ?あそこの狂犬ワンちゃん達、アタシの可愛いぼうや達を徹底的に手も足も出ないくらいに痛めつけられる位には強いのよ。

 こんなメチャクチャな事するぼうややおじょうさんなんて居たかしら?新人?

 とかく穏便に済ませようにも相手が分からなきゃどうしようもないでしょう?」

 「手口から予想するに、衝動で襲って壊滅させる事が出来るだけの力とこの街の勢力をある程度把握している者でしょう。少なくとも新人ではありません。ただ、一晩でここまで甚大な被害を引き起こす理由が分からない。

 新人でないのだとしたら、何故このタイミングなのか?衝動的にしてもここまで何も無い時にいきなり破裂したとは考え辛い。

 何か、何かが直近で起こっている筈です。」

 「あぁ?だよその直近に起こったのって。こんだけ一晩に潰す様なイカれたマネするクソがどうやったら生まれんだよ。」

 「分かるわけないでしょう。

 ここまでのことをやってのける輩で今の今まで潜んでいて、昨日今日で暴れだすなんて誰も思いつかないでしょう!」

 「ったく、頭でっかちのクソ理屈垂れやがって………あぁ?昨日今日?

 かそういや昨日だか今日だか騒いでた奴が居たって話をどっかで………」



 「ボス、会合中申し訳ありません。」

 「ん、どうした?」

 会合の最中は部屋に入ろうとさえしない筈の幹部の男が珍しくノックも忘れて部屋に入ってきた。

 「今回の騒ぎの中心のヤツの名前が分かりました。」

 「おぉ、このままで良い。言ってくれ。」

 「コズマ=ボンノー、よく名前を聞く警備官です。」

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