久々の外出
「で?副会長サマ直々にこちらにいらっしゃった理由は、世間話じゃないんだろ?」
2週間ぶりに外に出た気がする。前に外に出たのは定期でやってる移動販売馬車の手が足りなくてやったから…………あれ、ソレハホントウニニシュウカンマエカ?
「ぃ、オイ副会長。世間話なら俺は仕事に戻るぞ!」
「ッ!いやいや、世間話じゃないから待って貰えないか?」
目の前の大男がジトリとした目を向けていた。
最近記憶と景色が食い違う事が頻繁に起きるせいでどうにも不味い。
咳ばらいをして、口調を副会長のそれにする。
「我々モラン商会は、幾度の商会幹部の調査、賊の拠点に潜入させた商会幹部、元商会の人間の証言、その他関係者からの情報提供を統合して、サイクズル商会が近頃頻出している盗賊団と癒着、ないしは主導となって他の商会を襲っているという結論に至りました。」
「手紙でその話は聞いた。お前さん、それは冗談じゃないんだよな?
商会同士の足の引っ張り合いに俺達を使おうっていうなら、笑い話じゃ済まないからな?」
目の前の大男は真面目な、硬い表情になっていく。
元々縦横奥行きと大柄な大男。更に表情が強張っていく関係で、真っ当な商人が対峙すると威圧感で潰されそうになる。
ここは警備局。この国の民草の法律の遵守の抑止力たる警備官達の拠点であり、捕まった賊やら詐欺師やらをブチ込む檻がある場所。
そして、目の前に居る男の名前はコズマ=ボンノー。この辺りの警備官の中では能力、人望、扱い易さ、
「幹部の調査に関しては幾つも物証や言質を取っているので、それらの提出や証人の召喚が可能です。
元サイクズル商会の人間に関しては現在我が商会にて雇っているので、なんなら今日これから呼び出す事も可能ですが如何ですか?」
目の前の大男は、ただの商人には強過ぎる威圧感を放っている。
が、モラン商会副会長のジャリスは元傭兵。この程度で怯むほどヤワではない。
『この仕事が終わったら一段落。一秒でも早く終わらせて寝る。とにかく寝る。』
鋼の意志の前では巨漢の威圧程度、天災の前の人に過ぎなかった。
「……俺も冗談でお前さんがここに来たとは思ってねぇ。本気だってのは分かるし、情報も本当だろうよ。
が、だからだ。だからこそ俺はお前さんを信用出来ない。
『時間を取れ』だの『協力する』だのと手紙には書いてあったが、何が望みだ?
ライバル商会を潰すだけならコッチに情報渡して後は俺達を働かせりゃそれで終わるだろう?」
威圧が一層強くなった。
正念場はここからだ。
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