モラン商会〇〇〇〇計画1

 (浚われた人達の人相情報と一致、間違いないなぁ。コイツらが商人襲って浚ってったなぁ。)


 盗賊団のアジト内


 目から光の喪われた男達を余裕の表情を作って見つつ、同僚・・に親しげに話しながらそんな事をエーは考えていた。


 エーの潜入自体は呆気無い程簡単に成功してしまっていた。

 襲撃されたと思しき場所の情報を集めて、それぞれの地点を中心にした円を地図に描く。そうして地図に幾つも描かれた円が最も多く重なっている場所を重点的に探してみたところ、明らかに堅気ではない集団を直ぐ見つけられたのだ。

 あとは元々商会で打ち合わせてあった『商会を理不尽にクビになってその恨みであちこちの商人を襲っては略奪を繰り返していた。流石に一人でやるのに限界があったから手を組みたい。』という物語を語って聞かせ、その後で三人の盗賊と本物の武器を使った模擬戦とは言えない模擬戦をやらされた。


 三人の盗賊達相手と対峙して、それを周りの盗賊達が囲むように下卑た笑いを浮かべている。

 (実力判断といったところかなぁ……死にかけるまで特訓させられた力、発揮しちゃおうかなぁ?)

 「さぁさぁ、やらなきゃこっちからやるからな!」「おいおい、殺すなよ。」「退屈してんだ、血を見せろよ!」「一番のザコはブッコロぉ~~~。」

 ヤジが飛ぶ中で剣を構える。

 「殺せぇ!」

 そのヤジが飛んだ瞬間。三人の内の一人が赤錆が付いた大剣を上段に振り上げて襲い掛かる。

 その瞬間にこちらもダッシュ。ゼロ距離まで近付いて驚いたままの顔の顎にパンチ。

 (まず一人だなぁ。) 

 剣を持っているからと拳を使わない道理は無い。あらゆる手段を選択肢として並べて最適解を選び出せ。

 「お…ぉお………」

 一人目が崩れ落ちる。

 それを見ていた短剣使いと長剣使いが呆気に取られている間に……

 (二人目…からの三人目!)

 更にダッシュして長剣の鳩尾を柄で殴り、もう一人の短剣使いを長剣の間合いを生かして切り上げる……と死ぬので剣の横っ面をフルスイングして殴り倒す。

 「さぁて、こんなモンだが、どうだ兄弟?」

 囲んだ盗賊達にまだまだやれるアピールをしたところで…………

 「「「「うおぉおおおおおおおおおおおお!」」」」

 頭が割れそうなエール。

 こうしてあっという間に盗賊達の心に『強い味方戦力』という偶像が出来上がり、盗賊達の信用を得た。

 (剣術がまさかこんな所で役に立つとはなぁ……)

 心の中で遠い目をするエー。

 エーは元々剣を使っていたが、特に剣術を習っていた訳ではない。

 が、今の模擬戦で使ったのは邪道であれど剣の術理。

 (会長の指南書に感謝……するしかないなぁ……)

 モラン商会会長からの厳しい指導がここに活きていた。

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