If?:触れ愛68

 「ッ!」「どこに居る⁉」

 警戒して背中合わせに警戒する。辺りには人影一つ無い。耳を澄ませど聞こえるのは遠くから響き渡る悲鳴と爆裂音だけでさきのはっきりとした声の主は見当たらない。

 「あぁ、私の事を探しているであろう諸君に残念なお報せだ。この声は無論君たちの耳元に囁きかけている訳ではない。私のちょっとした魔法でね、少しの魔力で広範囲の人間に声を届ける事が出来るものだ。街全体に声は届いているけど君達の姿は見えていないし、これから説明するこの街に撒かれたに関する疑問にも答えない。」

 「………。」「!」

 驚きと警戒心。この声の主は今、悪びれもせず、何の隠し立てもせずにこの非道で残虐で惨い現状を作り出したのは自分であるとはっきり言ってのけた。大胆不敵にして残虐非道、考えが全く読めない。

 だがしかし、二人はチャンスだと心の端で思った。術式とは、他の魔法と一線を画する程異常に使用者を消耗させる代物であり、魔法の心得が無い者に魔法を使わせる事が出来る技術であり、そしてたとえそれ術式がどんなに優れた効果を発動させずとも『術式が成り立つ』という段階で精緻かつ複雑な高難易度魔法として認識される代物でもある。例え二時間掛けて人の手の甲に術式を刻み、満身創痍になって作った術式の効果が『手袋にも満たない保温性を手首から先に与える』という費用対効果が絶望的なモノだとしてもそれが出来ている段階でその術式の付与者の技量は一目置かれるモノである。

 それだけ考えれば『超絶技巧の術式付与の使い手がこの件の黒幕である』という絶望的事実が突き付けられるだけ。しかし、術式付与をした人間は自分の術式の理解に関しては当然最も深く、解除の方法も知っている。

 術式や魔法の情報が他者に漏れても対処できるように強力な術式や魔法には暗黙の了解で意図的にが出来ている。それを聞き出せれば街全体にかけられた術式を丸ごと解除できるかもしれない。

 そして、彼女は『この街に撒かれたに関する疑問にも答えない。』と言った。術式を作った張本人はその街でもなくあの街でもなく、この街、つまりこの近くにいる可能性が高い。そして、本人は間違い無く消耗している。

 ここまで精密で効果的なモノをリスク無くは産み出せはしない。

 無論守り手が居るだろうが、この混乱した状況で消耗した足手まとい重要人物を守るのは困難だし、何より大人数なら目立つ!

 チャンスだ。



 「では、術式について説明しよう。

 先ず、その術式はもう私には解除出来ない。」

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