If?:触れ愛65
街のあちこちで困惑の声と好奇心、未知への僅かな恐怖が立ち上ぼり始めた。
原因は幾人かの体に現れ明滅し始めた奇妙な紋様。
何をするわけでもない。何が起こる訳でもない。だからこそ奇妙で不気味で不安な紋様。
「これが何か解るかい?」
「さぁ、化粧?」
「なにこれ、洗っても落ちないんですケドォ!」
「魔術?違うな、これは術式か。
誰か、この辺に魔法に秀でた者は居ないか?」
「お?何か俺も光始めたんだけど?」
「え、何か触ったら光始めた?」
紋様は増える。
持つ者は自分の持ち物を他者へと分け与え、分け与えられた者はまた他者へと。
8が16に。
16が32
32が64
64が128
128が256
256が512
512が1024
1024が2028
2028が4056
4056が9112に増えていく。
これは無限に続く?終わりの無い数字の遠い何処かに続いていく?
そんなことはない。
人の世界は上限があって、人の世界は下限があって、もうここは戻れない終わりへ進んでいる。人の生きる世界の数字に無限は無い。そして、0は存在している。
終わりは転がる様に落ちる様に、そして、最後には砕け散るもの。
「お?何か光始めた!」
「眩しいな……何が起きるんだ?」
「あれかな?俺の神々しさがやっと人類に見えるようになってきたとか。」
「寝言は寝て言えよ、あともっと暗くしろよ。これじゃぁ眩しくてなんにも見えやしないだろうが。」
「いゃ、そう言われても俺がやってる訳じ 」
おちゃらけた言葉は最後まで聞けなかった。
急に光が消えて、大きな音がして見えるものが全部真っ赤になって、気の合う友人は消えてなくなって……。
「うぁあああああああ!!」
赤い色と肉片とに染まり、所々に骨片が刺さった体で目の前の赤い水たまりから逃げた。
友達はもういなくなった。
「始まったみたいだな。」
誰も居ない尖塔でティーセットを広げながら眼下を見やる。
ポットから紅い色の液体がカップに注がれていく。湯気が立ち上り、風に乗って甘い香りが広がっていく。
風に乗って爆発音や悲鳴や奇声、人の苦痛に満ちた感情が流れてくる。
未だ少ないが、爆発するものが出てきたらしい。
「文字通り、高みの見物といこう。
……いや、少しだけ説明はした方がいいか。無言で忍び込ませ、侵し、破壊し、踏み躙り……というのは忍びないからね。」
湯気が立ち上るカップを置いて、何かを考えながら人差し指を空へと指した。
人差し指から細く青い光が伸び始めた。それは意味有る形をとり、空へと浮かび上がっていく。
ある法則に従ったそれは人に自分の意思を伝える魔法。そして、この場においては人々の不安を消し去り代わりに狂気と凶器を掴ませる魔法。
「さて、名探偵は現れるかな?」
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