If?:気まぐれで変わった破落戸達の最後の悪夢11


 物心ついた頃から一緒だった15人。

 底辺な俺達は生きる上でプライドを持たない。

 群れて、意地汚く、悪賢く、無様に、生き延びる。

 毒を喰らい、他を傷付け、奪い、卑しく、惨めったらしく、みすぼらしく、醜く、狡く、そして時に冷酷に生きる。

 ずっとそれで生きて来た。

 ある時は道を歩いていた大人数人の頭に建物の上から石を投げつけて財布を奪い取った。

 ある時は腐り切った下水の水で空腹を満たした。

 ある時はチョロい金持ちに哀れな物乞いを演じて、架空のお涙頂戴話をして同情を買い、金をせしめた。

 ある時は数人で露店の物をワザと目立つように盗み、店主がそっちに気を取られて追いかけている隙に店主不在の店を丸ごと盗んだこともある。

 寒さで凍えた時、転がっていた死体を焼いて食って暖を取った。


 だからこそ、俺達は運良く生き延びられた。

 同じ事をした奴は他にも居た、当然の様に。

 ここで生き延びるには、お行儀の良い連中からしたらゲロ吐く様なマネを最低でも常にしていなければならない。

 例えそんな事をしても、生き延びられる保証は無い。

 同じ事をしても生き延びられたのはそんな中のほんの一握り、その中に俺達は運良く居られた。


 その日、俺達は至極上機嫌だった。

 いつも通り、適当に目に付いた連中から奪い取って、暴れて、壊して………結果、返り血で真っ黒に汚れていた服が更に汚れ切り、既に痛みを忘れて明日には忘れている様な怪我をして、革袋に入った薄汚れた金貨を数枚手に入れた。


 大儲けだった。


 降って湧いたあぶく銭。食い物も着る物も住む物なんざ何の意味が在る?

 どうせ持っていても腐りはしないが、持っていたらいたでいずれ小狡い盗人に盗まれて失くなるのは確実だ。

 だったら使い道なんぞ決まっている……そんな訳で、薄汚れた金貨をゴミ溜めの中のボロ酒場で何を原料に造ったんだか解りやしないドブの様な色をした酷い味の安酒に変えて、あおって騒いで使い切って……陽が落ちる頃には既に良い気分だった…………。

 建物の陰になって一足早く夜になった大通り近くの裏道を、少しよろめきながら、意味も無い話でバカ騒ぎをして歩いていた。

 だからだろうな、その時の俺達はどうかしていた。

 違うな。酔っぱらってどうかしていたとしてもあんな行動、普段ならばしなかった。




 「あぁ!お嬢さん、探しましたよ。」

 大通りと裏道の境で男がガキに声を掛けていた。

 ガキの方はいかにもなイイトコのお嬢様。何を話しているかは知らんが、こっちに背を向けた相手の男の言葉を聞いて、目を輝かせていた。



 『ああ、何時もの事か。』

 そう思った。

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