怒りの源は優しさ故だった

 私は止めないさ。

 たとえ都合の悪いことが起きても私は全ての痕跡を消す事が出来るからね。だから、止めない。

 彼女は止めたかった。

 都合の悪いことが起きたら消す事は出来ず、守る事も出来ないからだ。


 何を言いたいか?何の話か?と言えば、三人組にシェリー君の状況を教えるか否かという事についてだ。

 私は話す事を止めない。

 理由は簡単。この陰謀ごっこの事を黙っていられないなら始末すれば良いと私は考えているからだ。

 情報は流出させず、証拠を残さず、死体を残さず終える事が出来る上、正直、然程手間にならないから如何でも良いのだよ。

 シェリー君としては、絶対に話したくなかった。

 理由は簡単。ここで下手に巻き込めば最後まで、本当に徹底的に三人組を騒乱に巻き込む事になるからだ。

 しかし、話さない訳にもいかない。

 『ここから同盟の連中が首尾よく逃げられた場合、追手は次に如何するか?』と考えれば解るだろう?

 この辺の連中が三人組を脅して絞り上げて情報を聞き出そうとする。

 しかし、三人は知らないから、尋問する側は余計激高するだろうな。

 三人がシェリー君達に親しげに関わった段階で最低でも警告はせねばならなかった。

 まぁ、三人がこの件で損を被らない方法は一つ有るんだがね。

 私なら面倒なプロセスを挟まず、同意無いまま連中を巻き込んでいた。

 が、シェリー君としては巻き込んだ手前、というより、三人への誠意として情報を開示するんだな……これが。

 学校の裏、人気の無い事を確認して、シェリー君は三人に今置かれている状況、この立て籠もり事件の裏の姿をつまびらかにしていた。

 三人は驚きながらも真剣な表情で黙って最後まで話を聞いていた。

 そうして最後、シェリー君と同盟連中の状況と、それに付随した三人組の状況を説明して……………

 「謝って如何にかなる事では無い事は承知しています。

 ですが、皆さんをこんな危険な事に巻き込んでしまい、申し訳有りません!

 我々はこれから逃走するので、逆方向からお三方はどうか逃げてくだ」「「「見損なわないで貰おうか?」」」

 シェリー君の謝罪は三重奏に掻き消された。

 三人組は慈しんでいる。同時に、怒っている。

 「小娘一人で御貴族サマに挑もうなんて甘ったれるんじゃ無いよ!」

 「子どもが背伸びしたい気持ちは解りやす。大人は通って来た道だからよく解りやす。

 が、だからこそ言いやしょう。大人に気兼ねして一人で戦うなんて間違ってる。」

 「俺達だってよぉ、大した力じゃ無いけど、嬢ちゃんの手伝いするくらいなら出来なくもねぇんだぜぇ。

 それに、自分の身くらい自分で守れる。馬鹿にしちゃぁいけねぇよぉ。」

 優しさ故に怒っていた。

 「「「で!手伝うにはどうすれば良い⁉」」」








 さぁて!三人組をこのドサクサに紛れて可能な限り惨たらしく始末する方法を考えなければ!

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