番外編:教授と私と疫学思考実験2
同じく連載中の『異世界バーサーカーガール ~JKヒロインの異世界暴拳譚~』でも同じような番外編が出ています。
アプローチが違う二人のヒロインの姿をご覧頂けたら幸いです。
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この物騒な思考実験は非常に役に立ってしまう。
たとえば、戦争になれば扱いきれる保証も無いのにウイルス・細菌を使おうとする輩がホイホイ湧いて出る。
ウイルス・細菌の類いは突然変異で凶暴化するから統制はおいそれと、誰にでも出来るものではないのに。だ。
挙げ句に伝染してパンデミックが起きても弱みを他国や敵国に見せないようにするために情報を隠匿して、突然変異を招いて被害を拡大させる場合もある。
結論として、困った事に役に立ち得るんだコレが。
「では、前提として。
私が今回仕掛けるのはウイルスとする。
私が予めウイルスを仕掛けたと仮定し、その場所を予測出来れば君の勝ち。
毒性に関しては、今回は弱め、逆に感染力は強いものだ。
感染条件は、ウイルスが粘膜に触れた場合とし、ウイルスは人体から離れても一時間は感染力を持ち、1人のウイルスで複数が感染する可能性があるものとする。
初手で悪手ならば即座に詰むと思いたまえ。」
「解りました。」
「では、悪い教授はウイルスを学校の教室に仕掛けよう。
それに気付いた名探偵シェリー君はウイルスを排除しようとしたが、殺菌の為の薬品は限られている。
私は何処に仕掛けたと思う?
さ、入室したまえ。」
「先ずは扉のノブを。
真っ先に人が手を触れます。」
即答だった。
教室に仕掛けたと言った。
この段階で部屋の中をイメージした人間が多いだろう。だが、私は『入室したまえ。』と言った。
そう、未だシェリー君は入室していない体だった訳だ。
入室段階のリスク、ドアは誰もが触るからリスクが大きい。
先ず始めに仕掛ける場所。だが同時に誰もが思いつく場所でもある。
「私のウイルスが殺菌された。
さぁ、次にどうする?」
「入室後、先ずは全席の椅子の背もたれを消毒します。
普段何気無く座るのであまり意識しませんが、背もたれの有る椅子に座る際、そこは椅子を引くために必ずと言って構わない程触れます。」
宜しい…の、だが。
「アウト。
椅子の前、ドアノブは消毒したが、ドアの消毒が甘かった。
ドアノブを掴むのはそうだが、入室時にドアを開ける際、複数人入る際にドア自体を手で押す場合や、大きな荷物を入れる際に、目線の少し下を無意識に押してドアを完全開放する場合が有る。
この段階で数人がやられたね。」
「っ!!」
「私の勝ち。
ちなみに、椅子の背もたれはそうだが、机の上や椅子の座る部分も消毒すると良い。
机の上に置いた物に付着させて別の場所でバラ撒く好機や、椅子に座った後で座る位置を調整する際に触れさせるパターンもある。
同様のパターンとして、馬車や乗り物の椅子、特に横に長いモノにも仕掛けるだろうさ。
天井低い中、奥の席に座る時には椅子の上を這う様に動く場合もあるからね。
中々良かったが、まだ足りないね。
視野を広く、悪意を警戒して、見ることだよ。シェリー君。
そうすればリスクをゼロに近付ける位は誰にでも出来る。」
「………難しいですね。
そして恐ろしいですね。
あっという間に私では教授に滅ぼされていました………。」
「なぁに、ウイルス細菌は所詮倍々ゲーム。所詮ねずみ講。あくまで掛け算。
逆に言えば初手。この場合、私がウイルスを仕掛ける段階で未然に私を拘束出来ればなんて事は無い。
1に1000を二回掛けてしまえば100万になる。こうなってしまっては、収拾は困難だ。
が、最初に1を0にしてしまえば、億だろうが兆だろうが、掛けても0。
そうすれば簡単な話だ。
視野を広く、未来を見て、その上で速攻。これが理想だ。
まぁ、この手の案件では他にも厄介な事は有る。そちらの懸念も重要だね。」
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