因果な商売
「これで……どうだ?」
シュッ
異常に詰め込まれた本棚に、さっき抜き取った本を無理矢理突っ込む。
本棚と本に囲まれて圧縮された逃げ場の無い空気が妙な音を立てて…………あぁ、面倒だ。
偽の本の表紙からレバーが飛び出て来ちまった。
「ジャリスさん!!これって!!」
レンが警戒しながら…………違うなありゃ。
本棚に隠されてた仕掛けを見てはしゃいでる。
さっきの爆発騒ぎでビビっているんだか知らないが、近付きはしない。が、ガキみてぇに目を輝かせて偽の本から飛び出した仕掛けををジーっと見てる。
ポカリ
「痛ッ!なんスか!?」
「仕事中だって忘れるなよ?」
「解ってるッス。ただ、こんな如何にもな仕掛け、見た事無かったんでつい…………。」
忘れてんじゃねぇかよ。
「離れてろ。」
「いぇ、自分が!!」
「楽しそうに言ったって駄目に決まってるだろ。」
偽の本から飛び出した仕掛けを吟味する。
どうやら本棚の後ろから空気が送られると飛び出す仕掛けらしい。
本棚のキャパが一冊分開けて一杯になった状態で最後の一冊を入れると空気が本棚の裏に送られて……ってところか。
ガチャリ
慎重に飛び出た部分を回す。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
本棚が動き出し、俺達の前に下へと繋がる階段が顔を覗かせた。
「ヤッホー!」
「レン。」
「ジャリスさん、流石にこれを我慢するのは…………」
レンが口をつぐんだ。
「おいレン………………お前、ふざけてっと、死ぬぞ?」
『本棚の仕掛けを弄ると隠し階段』
あぁ、如何にもレンが喜びそうだ。が、今俺達が居る場所を考えろ。ここは何処だ?攻め込んで来る敵が居る要塞か?王サマが住んでる城か?御貴族様の別荘か?違うな。貴族の所のガキは居るが、学校だ。緊急時に逃げる為の隠し通路なんて要らない。
隠し金庫?学校なら、金目の物も本来なら無い。誰もがそんな事知ってるから、こんな場所に押し入る奴なんて居ないし、盗みをやる奴も居ないから、こんな大仕掛けも隠す必要性も無い。
本来ならな。
本来なら必要無いこんな凝ったモンをわざわざこんな風に備え付けてるって事は………面倒この上無い。
ハァァァ…………この先へ進んで行ったら確実に面倒事に出くわす。そしてそれは、下手すれば死ぬようなレベルで厄介だ。
かと言って、このままここを無視したら無視したで傭兵としては看板を下さざるを得ない。戦う他に他に能の無い俺達に待ち受けるのは結局野垂れ死に。
進んだ方が幾分か生存の可能性が有るってところかねぇ………。
「行きも地獄で帰りも地獄……………因果なモンだ。
はぁ…………………傭兵、辞めてぇもんだ……………。」
二人の男は地下へと続く道を歩いて行った。
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