ジャリスの憂鬱
「ジャリスさんッ!」
本が引き抜かれる直前、ほぼ同時に爆発音と振動が部屋に響き渡った。
レンが慌てて体を強張らせて跳び上がる。
「罠?一体何が⁉ジャリスさんどうしましょう⁉逃げますか⁉」
「落ち着けぇ。爆発が起きたのはここじゃない。しかも俺がやったんじゃない。」
ポカッ
今にも窓ガラスを蹴破って飛び出しそうな勢いだったレンを小突く。
振動と爆発音が来たのは俺が本を引き抜いた後。レンは解らなかったようだが、本を引き抜く直前に爆発音と振動は既に起きていた。
「少し外の様子を見てこい。
警戒は怠るな。」
「わ、解りました!」
レンが冷静さを取り戻し、扉を開けて辺りを警戒しながら出ていった。
窓の方を見るとご令嬢がグラウンドで行儀良く並んでいるのが見える。
あぁ、面倒な事になった。
「さぁて……………………はぁ……………………面倒な事になった。」
音と振動が来たのは下の方からだった。
が、その下の連中は騒いでいる様子が無い。
レンに様子を見に行かせたが、多分何も見付からないだろうし、下で爆発騒ぎは起きていない。どころか煙一つ上がってないだろう。
さっきの爆発は遠くで起きている。そして、その爆心地は下。しかし、グラウンドの方では何も起きていない。
つまりだ…………この建物、地下がある。
しかもおおっぴらに出来ないタイプの、ちょっとした爆発が問題にならないくらいの大きさの地下空間だ。
居るんだろうさ。立て籠った奴等はその空間に。
で、多分そこに行く為の方法、入り口はこの本棚に隠されて有るんだろうさ。
「あぁー……………面倒だ。」
レンが何処かで爆発が起きたとでも言ってくれれば面倒じゃなくなるんだが…
「ジャリスさん!!ザッと見て回りましたけど、煙一つ見えないっス!」
ドアを乱暴に開けてレンが飛び込んできた。
「おぉー…よく(も)やってくれたな。」
「ジャリスさん?今の間はなんスか?」
面倒だ。
わざわざ人から隠すように作ってある地下。隠されている道を見つけ出して入っていく立て籠もり犯の知能と無謀に似た度胸。爆発。何より自惚れる気は無いが、こちらの狙撃という利を完封する修羅場を幾つも潜り抜けたであろう冷静さ。
どれをとっても面倒事は避けられない。
が、傭兵である以上、標的を始末する事は何が有っても実行しなけりゃならない。
「レン、本棚を調べる。お前も手伝え。」
とんだ厄介な仕事に恵まれっちまったもんだ。
「はぁ……報酬、弾んで貰わねぇと割に合わねぇ……………。」
ドォォオン!
何処かで又何かが爆ぜる音がした。
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